金与正氏が文大統領に連日秋波 首脳会談も言及、米韓離間狙う

北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長(聯合=共同)
北朝鮮の金与正朝鮮労働党副部長(聯合=共同)

【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(ヨジョン)党副部長が連日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に向けて秋波を送っている。25日夜の談話では、文氏が提案した朝鮮戦争(1950~53年)の終戦宣言に加え、南北共同連絡事務所の再設置や南北首脳会談など関係改善の問題について「議論を経て早期に解決され得る」と表明した。

与正氏は24日にも文氏が国連演説で行った終戦宣言の提案を「良い発想だ」と評価する談話を発表していた。一方で、北朝鮮の外務次官がその直前に出した談話では、米国の「敵視政策が残る限り、終戦宣言は時期尚早だ」と主張した。

文氏の任期が来年5月までと限られる中、文氏が最重要視する南北対話に応じる姿勢をちらつかせて先に韓国を取り込み、米韓の足並みの乱れを誘った上で、その後のバイデン米政権との交渉の主導権を握る狙いがあるとみられる。

25日の談話で与正氏は「個人的な見解」としつつも「(南北が)公正で互いを尊重する姿勢が維持されるときにのみ円滑な意思疎通が実現できる」と述べ、首脳会談などに言及。前提として、北朝鮮のミサイル試射を念頭に「自衛権レベルの行動」を「挑発」と罵倒し、韓国の軍備増強は正当化する「二重基準」をやめよと韓国に要求した。

与正氏は24日にも敵視政策と二重基準の撤回を求めていた。ただ、北朝鮮が説明してきた敵視政策の内容は、米戦略兵器の韓国展開や米韓合同軍事演習の完全中止を意味する。米韓同盟を重視するバイデン政権が応じ得る条件とはいえず、現状では、米朝協議の再開に結びつく見込みは薄い。

与正氏は、南北が「舌戦で時間を浪費する必要などない」とも指摘。北朝鮮で経済難が続く中、閉塞(へいそく)した外交環境を早期に打開したい内情もうかがわせた。