柴門ふみの人生相談

親の介護で逃げた弟 参加させるには?

イラスト・千葉真
イラスト・千葉真

相談

70代女性。2年8カ月、一人で90代で「要介護3」の母を介護する日々に疲れ果てました。悲しいのは、介護が始まった途端、それまで仲が良かった弟一家と絶縁状態になったことです。

私は2年半程前から母と同居です。母と私の年金と貯金を取り崩しながら、毎月の介護と暮らしの費用をまかなっています。弟夫妻は車で30分ほどのところに住んでいて、ともに大学の教職者です。しかし介護も費用の援助もしようとしません。

この2年半、私は何度も心身の病気にかかりました。弟が手伝いに来たり、費用を分担してくれたら介護を続けられそうですが、慰労の言葉すらない状況です。長男である弟をあれほど溺愛してきた母になぜ、こんな残酷な仕打ちができるのか。彼にも参加してもらうにはどうすればいいでしょうか。

回答

親の介護をめぐってきょうだいの仲が悪くなる話はよく聞きます。70代の相談者の方が、「要介護3」のお母さまを一人で介護されるのは、大変な状況だと思います。

ご相談の文面からだと、地位もお金もあるのに全く手伝おうともしない弟さん夫婦は、冷血で非情な人間に思えます。しかしこれは相談者の方の一方的な訴えです。弟さんの言い分も、それなりにあるのではないでしょうか。介護が始まった途端、「それまで仲が良かった弟一家と絶縁状態に」なった、という文脈が飛躍しすぎて、私にはよく理解できません。

介護してくれる姉に感謝こそすれ、絶縁という強い態度に出るにはそれ相当の理由があるように思えます。この点をはっきりしないことには、介護を手伝ってもらうのは不可能に思えます。相談者の方に、何か思い当たる節はありませんか?

家族には長い感情の蓄積があり、ずっと口に出せなかった思いが何十年か後に突然噴出することがあります。90歳を超えた父親が危篤になったとき、「親父の葬式なんか絶対出してやるもんか」と叫んだ長男がいました。彼は、40年前に家風に合わないからと、無理やり妻と離婚させられた恨みをずっと抱えていたのです。

弟さんも、彼なりの家族に対する思いがあるのかもしれません。家族のこういった感情のもつれは、第三者に仲介してもらうのが最善だと思います。家族だと、何十年前にこんなことされたとか、あんなこと言われたとか、お互いの不満が炸裂(さくれつ)して手に負えなくなるからです。信頼できる親戚の方がいらっしゃれば、その人に間に入ってもらうのが一番いいと思います。

介護も弟さんより、ケアマネさんやヘルパーさんに頼んだほうがより的確なケアが受けられると思います。

回答者

柴門ふみ 漫画家。昭和32年生まれ。代表作は講談社漫画賞の「P.S.元気です、俊平」(講談社)のほか、「東京ラブストーリー」、「恋する母たち」(いずれも小学館)。10月から「ビッグコミックオリジナル」(同)で新連載「薔薇村へようこそ」が始まる。故郷の徳島市観光大使も務める。

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