中高生憧れの職業「ゲーム実況者」 著作権法違反も解禁相次ぐ

ゲーム関連動画視聴者数
ゲーム関連動画視聴者数

しゃべりながらゲームのプレー風景を個人がインターネットで配信する「ゲーム実況」。芸能人や有名ユーチューバーから一般の人まで多くの人が投稿しており、今、中高生が憧れる職業でもある。原則としてゲームの動画配信は著作権侵害だが、ゲーム会社がルールを定めて解禁する動きが相次ぐ。専門家は「実況による宣伝効果は大きい。ジャンルや作品によっては、企業側と配信側の共存共栄が望まれている」と話す。

ランキングの上位に

「勝手に斧(おの)振らないで」

お笑い芸人の狩野英孝(かのえいこう)さんによるユーチューブチャンネル「EIKO!GO‼」の人気コンテンツは、ゲーム実況動画だ。頓珍漢なプレーと必死の叫びがファンを喜ばせ、チャンネル登録者数は118万人を超える。

ソニー生命保険が今年7月に発表した全国の中高生1千人によるアンケートでは、ゲーム実況者が「男子中学生が将来なりたい職業」で5位にランクイン。「女子中学生~」でも10位、「男子高校生~」でも8位となった。

「ファミ通ゲーム白書2021」によると、ユーチューブなどの動画共有サービスを利用してゲーム実況動画を視聴するのは、5~59歳の日本の人口の約2割にあたる1642万4000人。とりわけ若年層に愛好者が多いとみられ、ITツール比較サイト「ストラテ」が8月に全国の15~29歳の男女400人に行った調査によると、10~20代の約3割がゲーム実況動画をほぼ毎日視聴すると答えた。

趣味の一つとして、自分のプレーを配信することも珍しくなく、若い世代ほど「ゲーム実況」は日常生活の傍らにある。

配信のルール明確化

一方で、ゲーム会社が許可していない実況配信は著作権の侵害となる。実況者の立ち位置は法律上グレーな部分が多く、訴訟に発展することも。人気の高まりを受け、会社側がガイドラインを策定する動きが相次いでいる。

「モンスターハンター」などを手掛けるカプコンは今年1月、個人の配信におけるガイドラインを5カ国語で公開した。同社はこれまで、自社作品のプレー動画やしゃべりが入った実況動画の人気の高まりを基本的には静観。しかし、悪質なネタバレや公序良俗に反する内容を含む不適切な動画が一部で見られたことなどから、明確なルールを定める必要性を感じたという。広報担当者は「結果として、ファン活動の活性化、不適切な動画の減少および削除件数の減少といった効果がみられ、(ファンの)皆さまからも好意的な意見を多数いただいた」と喜ぶ。

「マリオ」や「ポケットモンスター(ポケモン)」などを手掛ける任天堂も以前からガイドラインを公開している。ゲーム実況には作品のファンを増やす効果が期待できるとして、広報担当者は「当社のゲームやキャラクターなどに、お客さまが真摯(しんし)に情熱をもって向かい合う体験が共有されることを応援したい」とする。

「ぷよぷよ」などを手掛けるセガも今年4月、個人の配信における包括的なガイドラインを公開。「ドラゴンクエスト」などを手掛けるスクウェア・エニックス、「リトルナイトメア」などを手掛けるバンダイナムコエンターテインメントは、作品ごとにガイドラインやポリシーを公開している。

年間5億円以上稼ぐケースも

ゲームアナリストの平林久和氏は「ゲーム実況は、個人が草の根レベルで行っていた時代から、ここ10年の間に、世界的にも一大産業へと成長した」と指摘。今や視聴者からの投げ銭や広告収入などで、年間5億円以上を稼ぐ実況者もいる。自社コンテンツを利用して莫大(ばくだい)な収益を上げる個人や、宣伝効果について、企業側が見ないふりを続けることは難しくなった。「文化としては、配信即著作権法違反となる映画よりも、マンガやアニメの同人誌のような二次創作物としての発展を遂げている」と分析する。

ゲーム会社にとって、謎解きや物語性を売りにした作品は、ゲーム実況による「ネタバレ」が致命的だが、対戦型ゲームのように、大きな宣伝効果が見込めるジャンルや作品も少なくなく、「企業側と配信側の共存共栄が望まれている」と指摘した。