ビデオ会議で映る自分の見た目が気になる「Zoom異形症」が増加している

それ以前からも、美容外科を訪れる患者が雑誌から切り抜いた有名人の写真をもってきて、「こうなりたいんです」と望むことはあった。ソーシャルメディアが台頭する前でさえ、「鏡に映った自分」をよく見ている人は自意識が強くなるとことが心理学者たちには知られていた。

ところが、Zoom異形症はこれらとは異なる。Snapchatのユーザーは、「フィルターを利用してつくった自分の姿」を見ていることを認識している。これに対してビデオ会議では、自分でさえ気づいていなかったかたちで自分の外見が歪められているのだと、クーロシュたちはZoom異形症について最初に発表した論文で指摘している。

見慣れた表情とのギャップが原因に

スマートフォンなどに搭載された自撮り用のフロントカメラでは、写る人の画像が「びっくりハウスの鏡」のように歪んで見えるとクーロシュは説明する。鼻が大きくなり、目が小さくなって見えるのだ。レンズとの距離が近くなると、この効果はさらに激しくなる。一般にレンズは、人が現実の生活で会話する状況よりかなり近くに置かれるからだ。

それがスマートフォンやノートPCのカメラを見下ろすかたちになる場合は、最も望ましくない角度になる。“Myspace世代”の人々なら誰でも、最良のカメラ位置は上から構えることだとアドバイスするだろう。だからこそ自撮り棒はあれだけ普及しているのだ。

しかも、わたしたちは自分がリラックスしているときの顔を見慣れている。Zoomでの会議中に自分が集中して眉をひそめている顔(あるいは退屈している表情)は、鏡で見慣れている自分の像と一致しない。研究結果を発表した論文でクーロシュと同僚のシャニ・サイレンスは、次のように説明している。

「絶え間なく続くビデオ会議の結果として自己認識や不安感が変化したことが、必要のない美容処置につながっている可能性がある。こうした現象は特に、ビデオ会議やソーシャルメディア、フィルターをはじめとするオンラインプラットフォームに姿を晒すことが増えた比較的若い成人の間で顕著である」

10人に3人が外見への投資を検討

「Zoom異形症」という言葉は国際的なメディアに取り上げられた。結果としてクーロシュのもとには、共感したという知人や面識のない人々からのメールが殺到したという。

こうしたなかクーロシュは追跡調査をまとめ、『International Journal of Women’s Dermatology』に論文として発表した。追跡調査によると、調査対象となった7,000人のうち71%が「人と直接会って行動する生活」に戻ることに心配やストレスを感じているという。また64%近くが、メンタルヘルス面での支援を受けようとしたことがあったことも明らかになった。

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