主張

大阪3歳児殺害 救えたはずの命を失った

また、救えたはずの幼い命が失われた。行政、警察、児童相談所という関係機関での情報共有が適切に行われ、それぞれが職責を全うしさえすれば、最悪の事態は防げたはずである。

真摯(しんし)な反省とともに、どうすれば同じことを繰り返させない仕組みを構築できるのか、早急な検証を徹底すべきだ。

大阪府摂津市のマンションで8月、当時3歳の新村桜利斗(にいむら・おりと)ちゃんが、母親の交際相手で無職の松原拓海(たくみ)容疑者=大阪府警が殺人容疑で逮捕=に熱湯をかけられて死亡した。全身に重度のやけどを負っており、死因は熱傷性ショックだった。10分近くもの間、風呂場で高温のシャワーをかけ続けられた可能性があるという。

虐待の兆候は、1年以上前から市に寄せられていた。保育園は昨年1月と今年4月の2回、「こぶがある」と市に通告していた。

今年5月には母親も、松原容疑者が暴力を振るうことを相談し、母親の複数の知人も6月、「このままじゃ殺される」などと一時保護を求めていた。

だが市は、桜利斗ちゃんの様子を確認したものの、外傷がなかったことなどから緊急性はないと判断し、児相に伝えたが保護は求めなかった。

国のガイドラインは市町村が虐待情報を受けた場合、子供の安否確認を行うとともに、児相などの関係機関と情報共有し、緊急性が高いと判断された場合は、直ちに児相の権限で一時保護などの対応を取るとしている。

しかも大阪府では、4月から、府内全域の児相が受理した全ての虐待情報を警察に伝える「全件共有」の仕組みが導入されていた。だが今回の事件では、市経由で情報が入り、児相は事件前に警察と情報共有していなかった。

何のために全件共有するのかという根本的な認識が、理解されていなかったと言わざるを得ない。同様の事件は過去に何度も全国各地で繰り返され、そのたびに深い反省を社会全体で共有してきたはずではないのか。

桜利斗ちゃんは生前、松原容疑者について、「たっくん、いや」などと母親の知人らに訴えていたという。小さな体が懸命に発信していたSOSを、関係機関はなぜ「緊急性はない」と判断してしまったのか。経緯を詳細に見直し、明らかにしてほしい。