【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(318)】ミスター視察 アニマル投球「実にいい」太鼓判 - 産経ニュース

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勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(318)

ミスター視察 アニマル投球「実にいい」太鼓判

マウンドで雄たけびを上げる阪急のアニマル・レスリー投手
マウンドで雄たけびを上げる阪急のアニマル・レスリー投手

阪急のキャンプ取材の一日は長い。練習が終わるのはいつも午後6時過ぎ。始まりは鏡川の土手で行われる朝の体操から。上田監督はその前に毎日、数キロをジョギング。さすがにそれにはついていけないが、朝の体操に欠かさず出席すると、最終日に監督から〝皆勤賞〟が出た。

2月23日、キャンプ地に緊張が走った。選手たちも朝から「何時ごろに来られるの?」とささやき合っていた。「浪人」を続けている元巨人監督の長嶋茂雄が、初めて阪急の高知キャンプを視察にやって来たのである。この時の選手の興奮ぶりは雄ちゃんの『鬼に金棒』(194話)で書いた。

ミスターのお目当てはこの年、阪急に入団した新外国人投手のアニマル。打者を打ち取るたびに「ウオオッ」と吠えるオーバーアクション。マウンドに駆け寄った捕手の顔にマスク越しにグラブでパンチを浴びせるパフォーマンスは、大リーグ時代から話題になっていた。アニマルが実はどんな男だったか―はおいおいお話しするとして、この日はそのアニマルが初めて紅白戦に登板するという。ネット裏に座ったミスターの目が輝いた。

試合前に上田監督の指示が飛んだ。

「ええか、きょうは味方が相手やから、あんまり厳しく内角を攻めんでもええで」

だが、そんな指示を素直に聞く男ではない。「味方が相手だと二塁走者からサインが分かってしまう」と特別サインを作って投げるほど勝負にこだわった。

ウオームアップでいきなりバックネット直撃のボールを投げ度肝を抜く。さすがにのけぞるようなタマは投げなかったが、打者を打ち取るたびに「ウオォォ」。そしてベンチに戻ってくると、出迎えた上田監督のおなかにグラブでパンチ一発。上田監督は「ウッ」と息を詰まらせた。これには「ホホー、いいですね。実にいい」とミスターも大喜び。

「巨人にいたライトに似た感じだが、彼よりタマに力がある。コントロールもいい。上田さんも痛くないでしょう。自分で見てとってきた選手だしね。阪急といえば地味なイメージがあったけれど、彼で一変するんじゃない。ええ、きっと変わりますよ」

〝燃える男〟ミスターが太鼓判をおした。(敬称略)