美村里江のミゴコロ

たこ焼き名人の逸品

たこ焼きが好きだ。

焼きそばやお好み焼きなどのソース系ではダントツ。最後の晩餐(ばんさん)は梅干しご飯だと思うが、あと5食といわれたらたこ焼きも食す。月に1度くらい食べたくなってそわそわする。

舞台の大阪公演の差し入れでいただいたたこ焼き、おいしかったなぁ。東京の下北沢界隈(かいわい)に住んでいたときは、気に入りのお店に何度も通い、閉店の際は悲しかった。縁日のたこ焼きは当たり外れが多いが、それでも買ってしまう。

最近は時々お世話になる出前でも、サイドメニューにたこ焼きを発見すると主食を減らしてでも1つ頼んでみる。仕事帰りの小腹がすいた状態でコンビニで見かけると、ついついカゴに入れてしまう…。

そんなたこ焼き人生を歩んできた中で、あるとき恐ろしくおいしいたこ焼きに出合った。市販品でなく、飲食店でもなく、手作りである。

とあるレッスンに通っていたスタジオで、主催の先生の誕生日に20年来の生徒さんが作ってきたものだった。なんでも毎年先生のリクエストでたこ焼きを贈っているとのことで、私も興味津々。ありがたいことに「材料が余っても困るから大量に作ったの。ミムラさんもご主人とどうぞ~」とタッパーに20個ほどいただき、私は大喜びでいそいそと家に持ち帰った。

帰宅後、夫と私の背後に稲妻が走った。

「お、おいしい!」

温めなおす前の味見としてソースもなしに一つずつ口にしたのだが、十分すぎるおいしさで手が止まらず。結局、全て常温のまま食べ切ってしまった。

なんというたこ焼き、こんなおいしさがあったとは。だしたっぷりのやわらかい系ではなく、もっちり高密度の生地、別に変わった具が入ってるわけでもないのに次々と旨味(うまみ)を感じ、その中で一段とたこが輝いているという具合だった。

翌週、その方へお礼とともに夫婦の感激を熱くお伝えしたところ、「実は母が一時たこ焼き屋を…」と事情をうかがい大納得。「地粉は有機栽培、卵は比内地鶏、紅しょうがは添加物なしの梅酢から手作り、天かすもそのためだけに作り、だし粉も取り寄せ」。肝心のたこも、数年の試行錯誤の末、外国産を起用中とのこと。

これぞ心尽くし。「プレゼントのたこ焼き」だから到達できた域なのだ。プロのお店も、この真心には追いつけないわけである。