【国際情勢分析】見透かされた米国のイスラエル外交仕切り直し - 産経ニュース

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国際情勢分析

見透かされた米国のイスラエル外交仕切り直し

8月27日、米ホワイトハウスで会談したバイデン大統領(右)とイスラエルのベネット首相(UPI=共同)
8月27日、米ホワイトハウスで会談したバイデン大統領(右)とイスラエルのベネット首相(UPI=共同)

バイデン米大統領がイスラエルのベネット政権との新たな関係構築に動き出した。イランの核問題などをめぐり、ネタニヤフ前首相の下でぎくしゃくした中東髄一の親米国との関係円滑化を目指す。ただ、ベネット首相もイランに対する強硬姿勢を崩しておらず、その行方は不透明だ。

バイデン氏は8月27日、ベネット氏とホワイトハウスで初めて対面の会談を行った。ベネット氏が6月に首相に就任してから2カ月余り経過していた。

米国とイスラエルは、オバマ政権が2015年に結んだイラン核合意にネタニヤフ氏が反発するなどして関係が悪化。ネタニヤフ氏と蜜月だったトランプ前政権はイラン核合意から離脱したが、副大統領として核合意交渉を目の当たりにしたバイデン氏は大統領就任後、核合意の修復を目指している。

そのイランでは8月上旬、反米保守強硬派のライシ大統領が誕生したばかり。バイデン氏にはイスラエルの政権交代を機に同国との関係を仕切り直し、少しでも摩擦を減らしておきたい事情があった。

首脳会談では当然、イラン対応が主要議題となった。バイデン氏はイランの核問題では外交解決を第一としつつも、失敗すれば「別の選択肢がある」と述べ、強硬手段も辞さない構えを強調した。ベネット氏は極右政党を率いており、核合意への反対など強硬な対イラン政策を米国に求める立場は、ネタニヤフ氏と変わらない。ベネット氏は「イランが核兵器を持つことはないという明確な言葉を聞けてうれしい」と応じた。

両首脳のやりとりを踏まえれば、バイデン氏はイスラエル新政権との関係改善へ良好な滑り出しをみせたように映る。だが、バイデン氏の発言はベネット氏へのリップサービスにすぎないという懐疑的な見方も少なくない。

確かに、バイデン氏は「別の選択肢」には言及したものの、具体的な内容は示していない。イスラエルのエルサレム・ポスト紙(電子版)は、米政策研究機関「カーネギー国際平和財団」の核専門家、ジェームズ・アクトン氏の「バイデン政権が(イランに対する)新たな制裁キャンペーンを考えているかは疑わしい」という見解を紹介した。

また、米シンクタンク「民主主義防衛財団」のマーク・ドゥボウィッツ氏は同紙に対し、バイデン政権がライシ政権下のイランの動きを食い止めるため、サイバー攻撃や諜報部門でイスラエルと協力を強化するとの見方を示す一方、アフガニスタンを見捨てるような米軍撤収を引き合いに「バイデン氏の警告は決して信用できない」と指摘した。

「われわれは自国の安全保障を他国に委ねることはしない。われわれの運命を決めるのはわれわれ自身の責任だ」。イスラエルの有力紙ハーレツ(電子版)によると、ベネット氏は会談で、こうも明言した。

ライシ大統領は今月21日、国連総会での一般討論演説で、イラン核合意の修復に向け、米国などによる「全ての制裁が最終的に解除されるために役立つ対話を検討している」と述べ、全面解除に応じない方針のバイデン政権を牽制(けんせい)した。

米ニュースサイト、アクシオスによると、ベネット氏は首脳会談でバイデン氏に「じわじわと(イランを)破滅に向かわせる戦略」を提示したともいう。イスラエル側はバイデン政権が対イランで〝弱腰〟に陥る可能性を見透かしているようだ。

(住井亨介)