総裁選 政策を問う

問われる皇統維持の意志

安定的な皇位継承の在り方は、国家の基本に関わる極めて重要な問題だ。自民党総裁選では保守政党のリーダーとして、古来例外なく受け継がれてきた皇統の男系継承を将来にわたり貫く意志が求められている。

男系継承の維持を訴えているのが、高市早苗前総務相と岸田文雄前政調会長だ。高市氏は「男系の血統である皇統は、天皇陛下の権威と正統性の源であり、比類ないものだ。多くの国民の誇りであり、敬愛の情の源でもある」と語る。岸田氏も「前例のない『女系天皇』に反対だ」と明確に主張している。

ただ、先の大戦後の昭和22年10月、連合国軍総司令部(GHQ)の圧力で旧11宮家51人が皇籍を離脱して以降、皇族数は減少し、現在は16人にとどまる。皇位継承資格を持つ男性皇族は①秋篠宮さま②秋篠宮さまの長男、悠仁さま③上皇さまの弟の常陸宮さま-の3方で戦後最少となり、男系を貫いてきた皇統は危機に直面している。

高市、岸田両氏は皇統維持のため、旧宮家の皇籍復帰案を支持する。17日の共同記者会見で岸田氏が「旧宮家の男系男子が皇籍に復帰する案も含め女系天皇以外の方法を検討すべきだ」と述べると、高市氏も「岸田候補がおっしゃった通り」と応じた。

一方、母方にのみ天皇の血筋を引く「女系天皇」を容認するのが野田聖子幹事長代行だ。野田氏は男系継承を前提としつつ、議論を閉ざしてはならないという観点から「一つの選択肢として女系天皇が含まれる」と語る。ただ、「女系天皇」は前例がなく、皇統を途絶えさせる意味では「革命」に等しい。

発言が変遷しているのが河野太郎ワクチン担当相だ。河野氏は安倍晋三内閣の防衛相だった昨年8月、皇位継承の在り方について自身のインターネット番組で「(敬宮)愛子さまをはじめ内親王のお子さまを素直に次の天皇として受け入れることもあるのではないか。女系だと別系列になるというが、600年前に分かれた旧宮家は別系列ではないのか」と主張した。

ところが、首相の座をかけた今回の総裁選の論戦では「女系天皇」を容認していた立場を封印。「私の意見を言うより、政府の有識者会議の取りまとめで出てきたものを尊重したい」と明確な姿勢を示していない。

その政府の有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)は7月、現在の皇位継承順位を維持しつつ、皇族数を確保する中間整理を示した。皇族数の確保策として①婚姻後も女性皇族が皇室に残る②旧宮家の男系男子が皇籍復帰する-の2案に絞った。

政府が男系男子の皇籍復帰を議論の俎上に載せたのは画期的だったが、男系男子の皇位継承を保証したものではなく、「女系天皇」の可能性も閉ざしてはいないことになる。有識者会議は総裁選とその後に控える衆院選を経て政府に答申を出すとみられ、新首相の判断が問われている。(千田恒弥)

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