すっかり秋らしくなりました。気温が下がってくると過ごしやすくなりますが、血圧は上がってきます。夏に比べて秋冬は上の血圧(収縮期血圧)が5~10mmHg程度上がる人が多く、脳出血や心筋梗塞の発症も増えます。日本人の成人の半分近くの人が高血圧になると考えられており、ぜひ自宅で血圧を測るようにしましょう。
加齢とともに血圧が上昇してくる人はたくさんいます。塩分やアルコールの多量摂取が続いたり、体重が増えたりしても血圧は上昇します。体を動かさない生活も高血圧のもとです。生活習慣には注意すべきですが、自分ではどうにもできない、ホルモンの異常で血圧が変動することもあります。
50代の女性が血圧の相談にやってきました。数年前から血圧が高くなり、毎朝自分で血圧を測り続けています。収縮期血圧が140~160mmHgあり、治療を受けなければと考えていたそうですが、半年ほど前からは高かった下の血圧(拡張期血圧)が下がってきたというのです。少し脈が速めですが、動悸(どうき)などの自覚症状はなく、体重は少しずつ増えていると苦笑いしていました。血圧の値としては治療が必要であることを説明し、同時に血液検査をしました。その結果、甲状腺ホルモンが過剰であることが判明し、最終的にバセドウ病と診断しました。
バセドウ病に代表される甲状腺ホルモンの過剰状態は、甲状腺機能亢進(こうしん)症と呼ばれます。甲状腺ホルモンは元気に生きていくためになくてはならないものですが、過剰な状態が続くと体調が悪くなることが往々にしてあります。
具体的には手の震え、動悸、下痢、発汗過多、眼球突出、食べているのに痩せてきてしまうといったものですが、症状は人それぞれで、自覚症状のない人もいます。血圧については収縮期血圧が上がり、拡張期血圧が下がるという変化がみられることがあります。
甲状腺の他にも、副腎という小さな臓器から分泌されるホルモンの異常で高血圧を起こすことが知られています。降圧薬をたくさん使っても血圧が下がらない、時々急激にものすごく血圧が上昇する、手足は細いのに体幹だけが異常に太っているといったことがあれば、副腎ホルモンの異常がないか医師に相談してみてください。
この女性患者さんは、降圧薬とともにバセドウ病の治療薬を開始し、血圧もホルモンの値も落ち着いてきています。
(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)