「不細工でもいい」矢吹正道、執念で新チャンピオン

9回、寺地(左)を果敢に攻める矢吹=9月22日、京都市体育館(榎本雅弘撮影)
9回、寺地(左)を果敢に攻める矢吹=9月22日、京都市体育館(榎本雅弘撮影)

「世界王者になる」という夢がプロ16戦目でようやくかなった。22日、京都市体育館で行われた世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級タイトルマッチ。王者の寺地拳四朗(BMB)に挑んだ矢吹正道(緑)は、リーチで3・5センチ上回る体格差を生かした強打で優位を築き、最後は王者寺地を激しく攻め立てTKOで勝利。念願のベルトを腰に巻いた。

10回、鋭いフックとアッパーで寺地を強襲。額から出血した王者を連打で攻め、無抵抗に追い込むと、レフェリーが試合を止めた。

寺地が得意とするアウトボクシングに対し「生半可な踏み込みでパンチを打っても当たらない。不細工でもいい」と、大振りを覚悟で間合いを詰め、試合の序盤から大きくポイントをリードした。

中盤以降は目の周辺が腫れた影響で視界が限られ、消耗戦に。「途中であきらめてしまいそうになったが、何とかもちこたえてチャンスを待った」。攻守が目まぐるしく入れ替わる派手な打ち合いを粘り強く制した。

プロで13勝中、KO勝利は12回。KO率は圧倒的だ。世界ボクシング協会(WBA)スーパーフライ級元世界王者の飯田覚士(さとし)、戸高秀樹を指導してきた所属ジムの恩師、松尾敏郎会長は「センス、パワーなどすべてで飯田や戸高より上」と評価する。だが、プロでの歩みは決して華やかではなかった。17歳の時に長女が誕生。1女1男の父として、建築の仕事とボクシングを両立させてきた。

寺地の新型コロナウイルス感染で試合が延期となったが、この不測の事態もプラスに替えた。元世界ボクシング機構(WBO)世界3階級制覇の田中恒成(こうせい)とスパーリングを行い、「世界レベルを肌で感じることができた」と自信をつけた。「この試合に勝ったら引退してもいい」との執念が初戴冠を引き寄せた。(上阪正人)