中国の不動産大手、中国恒大(こうだい)集団の経営不安を起点に世界の金融市場が動揺している。20日の香港や米国の株式市場に続き、祝日明け21日の東京市場でも日経平均株価が大きく下げて3万円の大台を割り込んだ。
恒大集団はマンション開発などで事業を拡大する一方、過剰な有利子負債を抱えて資金繰りが悪化した。負債総額は30兆円を超えると伝えられ、デフォルト(債務不履行)に陥る懸念が高まっている。
破綻すれば直ちに経済危機を招くなどと、いたずらに不安視するのは適切ではないが、リスクの増減を見極める警戒は怠れない。連鎖破綻や金融システム不安につながれば、世界経済に深刻な影響を及ぼしかねないからである。
習近平政権は、恒大の経営悪化が危機の引き金とならぬよう迅速かつ万全の対応を講じなくてはならない。それが世界2位の経済大国が果たすべき責務といえる。
恒大は、市場の疑心暗鬼を回避するため経営状況について透明性の高い情報開示に努めるべきである。金融機関も融資の返済条件緩和など、デフォルトを避ける方策を検討する必要がある。
何よりも念頭に置くべきは、恒大の経営悪化に拍車をかけたとされる習政権の不動産政策だ。
中国では不動産市場の過熱を抑えるため、金融機関の不動産融資などへの規制を強めている。もちろん価格高騰に手を打つ必要はあろうが、一気に締め付ければバブルの崩壊を招く恐れがある。それをいかに回避するかが問題だ。
市場では、習政権は恒大救済には動かないという見方がある。習国家主席は「共同富裕」というスローガンを掲げ、貧富の格差解消を最優先課題にしている。不動産価格の抑制は格差解消につながる政策である。それが助長した経営悪化には手を差し伸べられないということなのかもしれない。
ただし、救済の是非は本来、経営状況や金融機関の動向などを総合的に勘案して判断すべきものである。自らのスローガンに固執するあまり混乱が深まることになれば、政権の結果責任は重大だと認識しなくてはならない。
中国経済は新型コロナウイルス禍からの回復傾向にあった。日本企業は対中輸出に頼っており、中国経済が変調を来せば日本の景気回復は遠のく。その点を踏まえて備えを万全にしておきたい。