朝晴れエッセー

立派なゴールイン・9月21日

102歳の父が亡くなった。

息子夫婦、孫、ひ孫たちと最後まで家で過ごした父は「幸せだ幸せだ」と言い残し逝った。

92歳で胃がんの手術をして、今年に入り食べ物が飲み込めなくなり、自ら胃カメラ検査を希望した。

診断結果は再発だった。しかし高齢のため、手術は無理ですと告げられた。選択の一つとして、少しでも食べられるようにステントを入れる手術をするか、何もしないかを問われた。父は一週間考え、手術をすると決めた。

病院では自分で何でもできる102歳は初めてだと褒められた。私たちに生きる見本を示してくれた父。

退院してから、私と昔話をして笑顔を見せていた父だが、日に日に痩せていった。

しかし最後まで会話ができ、亡くなる日に往診に来てくださった医師にお礼を述べ、数時間後に静かに息を引きとった。

弟は医師から「立派なゴールインでした。最高です」と言われたそうです。

亡くなった後に家族から聞いた話では、前日に、毎日楽しみに見ていた『日本一ふつうで美味しい植野食堂』の録画を孫の嫁に頼み、嫁は「録画がいっぱいで他のを消してよいか」と父に尋ねたら、「それはまだ見るから消さないでくれ」と。

数日前にはテレビ通販で大根おろし器を嫁に注文してもらい、亡くなった数日後に商品が届いたそうです。

まだまだ父は生きたいと思っていたのでしょう。今頃、35年前に亡くなった母と天国で再会して、積もる話をしていることでしょう。


志村順子(70) 埼玉県志木市