CARストーリー

マツダ初の量産EV MX-30

「カーボンニュートラル」。流行語のように広まったこの言葉は、自動車メーカーにも変革の波をもたらした。クルマの心臓ともいえるエンジンがその役目を終えようとしている。地球温暖化は、ガソリン車の逆風となり、欧米諸国はエンジン廃止を掲げる。クリーンディーゼルやスカイアクティブなど、世界に誇るエンジン技術を持つマツダも電動化にかじを切った。環境問題はクルマをどう変えるのか。マツダ初の量産電気自動車「MX-30EV」に試乗した。

(土井繁孝 写真も。)

マツダ初の量産電気自動車MX-30EV。マツダの本社がある広島市では路面電車と並走することも多い=広島市南区(ソニーα1 FE70-200mm F2・8GM)
マツダ初の量産電気自動車MX-30EV。マツダの本社がある広島市では路面電車と並走することも多い=広島市南区(ソニーα1 FE70-200mm F2・8GM)

これで電気自動車-。MX-30EVを最初に見たときの感想だ。ホンダeやリーフなどEVらしさを主張するクルマと一味違う落ち着いたデザインは、ある意味衝撃だ。

電気自動車には見えないシンプルなデザイン
電気自動車には見えないシンプルなデザイン

MX-30EVはエンジン車がベースで、デザインはほぼ同じ。街中で走っていても見分けるのは難しいだろう。インテリアも針式のスピードメーターが幅を利かし、横にはなぜか「水温計」がついている…。

クラシカルなデザインのメーターパネル。右端はバッテリー温度計
クラシカルなデザインのメーターパネル。右端はバッテリー温度計

エンジンを冷やすために冷却水が必要だが、水冷式のモーターというのは聞いたことがない。マツダによるとバッテリーに冷媒を使った冷却システムを採用。温度管理により、電池の性能を維持し、それを伝えるための「バッテリー温度計」とのことだった。

エンジンがなくボンネット内は広々している
エンジンがなくボンネット内は広々している

乗り心地もエンジン車のようなマイルドな味付け。知らずに乗ればEVと気づかないかもしれない。

EVといえばモーターの特性を生かした鋭いスタートや、利きのいい回生ブレーキなどがセールスポイント。ところがこのクルマは、品のいいガソリン車のようなマイルドな運転フィールを持つ。

丸いテールライトが個性を主張する
丸いテールライトが個性を主張する

アクセルを踏み込んでも、スピードはゆったりと上がり、モーターのトルクを生かしたスタートダッシュとは少し違う。

もちろん、走りに余裕がないわけではない。トルクは十分にあり、高速道路の合流でも滑らかに走行車線にすべり込む。

静かさがウリのEVだが、加速すると、「ウィーン」という音が響いてくる。ドライバーに走行感を伝えるために、エンジンの疑似音を流しているそうだ。航続距離は公称256キロを謳うが200キロまでに充電した方が無難だろう。

回生ブレーキの利きは、ハンドルにあるパドルの操作で調整する。左パドルを引くと回生ブレーキの利きがよくなり。右のパドルを引くと滑らかに。

コルクを使ったオシャレなインテリア
コルクを使ったオシャレなインテリア
コルクを使ったオシャレなインテリア
コルクを使ったオシャレなインテリア

インテリアも上質で、コルク材を採用するなどマツダらしいこだわりを感じる。1920年に「東洋コルク工業」として創業したマツダの歴史を反映したという。

4枚のドアは観音開きで、荷物の積み下ろしや、乗り降りがしやすい。ただ、フロントドアを開けないと後ろのドアが開かないのは少し不便ではある。

コルクが使われ高級感あふれるセンターコンソール
コルクが使われ高級感あふれるセンターコンソール

451万円からという価格は、ガソリン車のエントリーモデルより200万円近く高く、補助金などを考慮しても負担は大きい。

EV化を推し進めるヨーロッパなどでは、1万4000台以上の販売実績を持つが、日本では普及のハードルは高い。価格ダウンはもちろんだが、乗り手にも心の準備が必要になるのだろう。