物には命が宿っている―。「そんな気持ちでずっと機体修理に関わってきた」。今年7月に航空自衛隊第2航空団整備補給群(北海道)で定年退官するまでの36年間の隊員生活をそう振り返る。
道内の高校を卒業後、那覇基地(沖縄)を皮切りに千歳基地(北海道)、小松基地(石川)などで勤務。戦闘機を中心に機体修理一筋で任務に当たってきた。
長年取り組んできたのは業務改善。問題意識をもって日々の仕事に取り組み、部隊内では過去9度にわたって表彰された。平成28年に考案した機体外板修理用のドリルガイド治具は評価が高く、30年に文部科学大臣表彰の創意工夫功労者賞を受賞。令和2年7月には特許登録も受けた。
空中で激しい動きをする戦闘機は機体への負荷が大きく、時には金属製外板を固定するボルト穴周辺に亀裂が生じる。考案したドリルガイド治具は平面や曲面、段差など複雑な形状の航空機外板に装着することが可能。通常は2、3度の修理で部品交換が必要になるというが「この治具を使えば部品の寿命を延ばせる」と特長を説明する。
在職中は業務改善のポイントなどを後輩らに伝授しようと、イラスト付きで日記帳にまとめて積極的に情報共有をしていたという。現在は民間企業に再就職し、整備作業からも離れた。「まだ現役なら今回の顕彰を糧に後輩の指導に携わりたかった。現役の皆さんには楽しく業務改善に励んでほしい」と笑顔を見せた。
(坂本隆浩、写真も)
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