新型コロナウイルス感染を収束させるのに決定打はない。だが、昨年1月に国内で初めて感染者が確認されてから約1年8カ月が経過し、課題は浮かび上がった。自民党総裁選の候補者が置く力点は「四者四様」。人流対策のロックダウン(都市封鎖)をめぐっては、賛否が割れる。行政組織の在り方でも考え方は異なり、争点は多岐にわたる。
ロックダウンの検討が焦点となっているのは、第6波が到来し緊急事態宣言を発令しても、これまでの宣言連発で、もはや効果が期待できそうにないからだ。
河野太郎ワクチン担当相は18日の日本記者クラブ主催の公開討論会で「強い人流抑制が必要になる可能性があるなら、それに備える必要がある。ロックダウンを可能にする法案を国会で作ってもらうのが大事だ」と強調。高市早苗前総務相は「最悪の事態を想定した法の整備は必要だ。与野党で合同チームを作って合意を得てから国会に出すのが現実的だ」と語った。
ただ、ロックダウンには私権制限が伴うため、国民の反発も予想される。岸田文雄前政調会長は2日の記者会見で「警察が関わらなくても、強力な制限をかけなくても、日本にふさわしい強力な人流抑制の在り方を考えることはできる」と述べた。欧州で行われたような厳格なロックダウンと比べ、緩やかな形態を想定しているようだ。
否定的なのは野田聖子幹事長代行で、17日のテレビ朝日番組で「(ロックダウンは)究極の方式だ。冷静に判断しなければならない」と語った。
組織の在り方も争点となっている。菅義偉政権では主に関係閣僚と協議し、専門家でつくる新型コロナ対策分科会などの提言も踏まえて、政策を方向づけるスタイルをとっている。だが、このやり方では関係省庁や専門家などとの調整に時間がかかりかねない。
そこで、岸田氏が掲げているのが、司令塔となる「健康危機管理庁」の創設だ。国、地方を通じて強い指揮権限を持つという。「ウィズコロナ時代」の社会経済活動の在り方を検討する専門家会議の新設も公約に盛り込み、討論会で「物流や観光などさまざまな産業の専門家に集まってもらう」と語った。
河野氏は巨大官庁で機動性に欠くとの指摘がある厚生労働省の在り方に一石を投じている。厚生省と労働省との分割論に言及したほか、11日には記者団に「社会保障改革、特に年金と医療の両方の改革を1人の大臣で担当するのは大変だ。厚労省に特命担当大臣を置くやり方もある」と分野ごとに担当閣僚を置く案を披瀝(ひれき)した。
新政権では第6波をにらみ、医療体制の在り方が問われるのは間違いない。討論会で高市氏は緊急事態の際に、国や地方自治体が病床確保などを命令できるようにする法案を、次期通常国会に提出すると明言。野田氏は「危機の間だけ『サブホスピタル』を用意して、重症化しないように国が責任をもつ」と述べた。(坂井広志)