日本記者クラブが18日に主催した自民党総裁選の公開討論会での河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子各氏の主な発言は次の通り。
【新型コロナウイルス対策】
河野氏「ワクチン接種はいい調子で進んでいる。11月にもほぼ希望者は打ち終えるのではないか。コロナ禍でデジタル技術の必要性が認識された。しっかりとデジタル行政を入れ、社会をより便利に、より付加価値のあるものにしていかなければいけない」
岸田氏「11月までに希望者全員の接種を完了し、年末までに経口治療薬の開発・普及に努める。その間は徹底した人流抑制、病床確保、医療人材確保、数十兆円の経済対策を全体像を示しながら進める」
高市氏「治療薬を幅広く普及させる。ワクチン、治療薬の国産化に向け生産設備にしっかりと投資していく」
野田氏「重症化を予防するため、ワクチン接種に万全の態勢を整わせる。軽症者・中等症者を受け入れて重症化しないように国が責任を持ってやっていく。11歳以下のワクチンは望む人には積極的に投与できる段取りをしたい」
【ロックダウン(都市封鎖)】
高市氏「今必要があると思っていない。ただ、治療薬やワクチンが効かないような場合に、使うか使わないかは別として最悪の事態を想定した法整備をする必要がある」
河野氏「本当に強い人流抑制が必要になる可能性があるならば、備える必要があるのではないか。憲法論議というよりは国会で可能にする法案をつくることが大事だ」
【医療提供体制】
高市氏「緊急事態に国や地方自治体が医療機関や医療従事者に対し病床確保などの必要な対応を命令する権限を持つということも含め、法案化したい」
野田氏「自宅療養は無理だ。病院の受け入れができないのならば危機的なときだけ、国がしっかり(体制を)作り医療をしっかりサービスすることが肝要だ」
河野氏「非常時の指揮命令系統、権限は見直さなければいけない。重症化して回復した人を臨時病院なり、中等症・軽症の病床に移すことがうまく動かなかった。国、都道府県がきちんと調整しなければいけなかった反省はある」
岸田氏「感染症危機中核病院のような指定を行い、平素から診療報酬の上乗せで優遇を与え、危機の際には国のコントロールで半強制的に病床を出していく。健康危機管理庁のような有事の新しい司令塔を考えるべきではないか」
【経済財政、成長戦略】
高市氏「補正予算は絞り込むべきだ。コロナ対策、医療提供体制や治療薬などを普及させるための支援などに絞り込みたい」
野田氏「2050年カーボンニュートラルを実現するためにありとあらゆる努力をする。洋上風力、水素ステーションなどを公共事業として補正予算からしっかり応援していく」
河野氏「アベノミクスは企業の利益を大きくした意味では良かったが、個人の所得に行かなかった。まず労働分配率を上げた企業の法人税を減税し、賃金を引き上げていく」
岸田氏「成長と分配をセットで考えることで分配がさらに次の成長を生み出す。消費税率は10年程度は上げることは考えない」
【年金】
河野氏「基礎年金は最低保障のために使おうとすると保険料ではできない。所得がなくて保険料が払えない人はその分、年金が減る。最低保障にするならば税金で行い、一定以上の所得、資産のある人には払わないとするしかない。最低保障は税金でやる。その代わり資産、収入が一定以上ある人には出さないことで金額は制限できる」
高市氏「基礎年金を全部税金で賄い、さらに生活保護も税金という制度は無理があるのではないか。国民負担が増えていく」
岸田氏「税金を使った場合、消費税率が何%上がるのかをしっかり示して議論することが大事だ」
河野氏「どれぐらいの年金を、どういう人に支払うかによって税金の必要な額は違う」
【エネルギー】
高市氏「小型核融合炉を地下に立地すべきだ。高レベルの放射性廃棄物を出さない核融合炉にしっかりと研究開発費を投入していく」
河野氏「原発耐用年数は40年、運転延長しても60年だ。耐用年数が来たものを廃炉にすれば原子力は緩やかに減っていく。残された選択は省エネと、再生可能エネルギーを伸ばすこと。足らざる部分は原発を再稼働して補っていく方法しか今のところはない。コストが見直され、再エネの方が安いことが明確になった。原子力産業は、あまり先が見通せない。再エネで新しい技術が出れば、世界中に日本の産業が新たに巣立つことになる」
岸田氏「核燃料サイクルを止めるのか。止めると高レベルの核廃棄物はそのままとなる。再処理すると廃棄物の処理期間は300年、高レベルの核廃棄物を直接処理すると10万年かかるといわれている」
【菅義偉首相のコロナ対応】
河野氏「情報をもとに丁寧に説明をするところが残念ながら欠けていた」
岸田氏「納得感のある説明、決定に至るプロセスを丁寧に説明する部分に課題があった。危機管理の要諦は最悪の事態を想定することだ。国民から見て後手後手に回っていると見えてしまうことがあった」
【台湾情勢】
高市氏「台湾有事の可能性は高いと考えて備えなければならない。実効的な抑止と対処に必要な能力を保有し、日米同盟で補完する方法が考えられる」
河野氏「グレーゾーン事態や情報戦、攪乱(かくらん)が起きる可能性はある。日米同盟などで何かを起こさせないという国際社会の強い意志を中国に見せる必要がある」
岸田氏「自由や民主主義、法の支配、人権といった普遍的な価値を共有する国々とともに、中国に大国としての振る舞いを訴えていかなければならない。台湾有事の場合は、国民の命、暮らしを守るために安全保障関連法に従ってしっかりと対応していく」