【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(313)】福本の誓い「山田をマウンドに」ナイン引き継ぐ - 産経ニュース

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勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(313)

福本の誓い「山田をマウンドに」ナイン引き継ぐ

広島・川口投手の投球が阪急・福本の頭を直撃、ヘルメットは大きく割れた
広島・川口投手の投球が阪急・福本の頭を直撃、ヘルメットは大きく割れた

1勝3敗と土俵際まで追い込まれた阪急。10月19日の第5戦、福本がチームを鼓舞した。

「きのうのことが頭から離れんかった。ヤマ(山田)があれだけええピッチングしとるのに勝たせてやれんかった。悔いが残ってるやろ。そやから、もう一度、みんなでヤマをこのシリーズで投げさせたろう!って誓ったんや」

第4戦、エース山田は12安打されながらも3失点に抑えた。八回には先頭で自ら右翼線へヒットを放ち味方の反撃を待った。だが、162球の熱投は報われなかった。

◇第5戦 10月19日 西宮球場

広島 010 001 000=2

阪急 010 110 12×=6

(勝)今井1勝 〔敗〕北別府2敗 (S)山沖1勝1S

(本)小林晋①(北別府)

福本のバットには執念がこもっていた。五回、先頭で三塁線を破る二塁打。1点差に迫られた七回にも先頭で右翼線へ二塁打。仲間たちも続いた。弓岡がいずれもバントで三塁に送れば、五回には簑田が左翼へ。そして七回には不振のブーマーが右翼へ犠飛を打ち上げて勝利へつなげたのだ。

「このまま負けてしもたら哀れや。チームもワシも…。3安打? たまたま、ワシに運のある日やったんや」とフクさんは照れくさそうに笑った。

21日の第6戦、いきなり広島球場のスタンドが悲鳴で包まれた。一回、広島の先発・川口が投げたボールが福本の右側頭部を直撃したのだ。

バーンという音とともに福本のヘルメットが吹っ飛び、福本はあおむきに倒れた。騒然となる両軍ベンチ。ものすごい衝撃だったのだろう、ヘルメットは大きく割れていた。すぐさま市内の病院で精密検査が行われた。頭部への死球は怖い。開幕戦で左耳上に死球を受けた水谷は戦列に復帰してもなお後遺症で苦しんでいる。

福本は無事だった。割れたヘルメットのおかげ。そして、フクさんの〝誓い〟を残ったナインたちが引き継いだ。3点リードされた三回、2死走者なしから一挙7点を挙げ8―3の逆転勝利。エース山田に3度目の舞台を用意することができたのである。 (敬称略)