自民党総裁選に立候補した4候補の推薦人20人の顔ぶれをみると、各陣営の支持層や選挙戦術がみえる。
河野太郎氏の推薦人は、当選3回以下の衆院議員や当選2回以下の参院議員の若手が半数を超えた。「長老支配」「派閥支配」など党運営に不満を持つ若手の受け皿を狙っているようだ。衆院選の「顔」を求める若手の支持も当て込む。
岸田派を除く党内6派に加え、菅義偉首相に近い無派閥議員も推薦人として配置し、現政権の後継色が濃い。
岸田文雄氏の推薦人には、細田派、麻生派、竹下派の主要派閥の議員が4人ずつ、谷垣禎一元幹事長に近い議員グループと、自ら会長を務める岸田派の議員が2人ずつ入った。当選回数別では「老壮青」の幅広い支持がみえる。女性の推薦人が4候補の中で最多の3割に当たる6人おり、「女性活躍」でリードした形だ。
菅首相に近いが、河野氏の「脱原発」路線には距離を置く梶山弘志経済産業相もおり、河野氏への警戒心がみえる。
無派閥の高市早苗氏は保守色を前面に出した。安倍晋三前首相の出身派閥である細田派から7人が入った。山谷えり子元拉致問題担当相ら保守の論客をそろえ、「唯一の保守系候補」として党員・党友票の上積みを図る。一方、麻生、岸田、石破、石原各派の議員がおらず、横断的な支持が課題といえそうだ。
同じく無派閥の野田聖子氏の推薦人には、二階俊博幹事長率いる二階派の議員が8人並んだ。野田氏が告示前日の16日になって滑り込みで出馬表明にこぎつけたのは、二階氏の助力があった可能性がある。加えて、元夫の鶴保庸介参院議員ら個人的なつながりのある推薦人が目立ち、ぎりぎりかき集めた上での出馬だったことがうかがえる。
全体でみると、二階派は岸田氏以外の3候補に推薦人を出した。ある閣僚は二階氏の思惑について「岸田氏包囲網だ。岸田氏が決選投票に残れば、『岸田氏以外』にまとめるのではないか」と話している。(沢田大典)