変幻自在、進化続ける表現世界 「ロナルド・ヴェンチューラ展 ―内省」の魅力

《オーバーディフェンス》 2017年 油彩・キャンバス 182.9×274.3㎝
《オーバーディフェンス》 2017年 油彩・キャンバス 182.9×274.3㎝

フィリピンの現代美術家、ロナルド・ヴェンチューラはいま、アジアのみならず国際的なアートシーンで注目を集める作家のひとり。日本の美術館で初めてとなる大規模個展「ロナルド・ヴェンチューラ展―内省」が、長野県軽井沢町の軽井沢ニューアートミュージアムで開かれている。古典と現代性、グローバルとローカル、日常と非日常、ポップな遊び心と鋭い批評性…。さまざまな要素を織り交ぜた、幅広い表現世界を堪能できる。


展示室ごとに異なる世界

高さ3メートル超、黄金の骨をたずさえる犬のアイコン「ボブロ」に迎えられ、いざ6つの展示室へ。作家自身のアイデアに基づく展示は、部屋ごとに異なる世界を展開し、絵画や彫刻など計約120点で構成されている。

《 波 》 2016年 ガラス繊維、樹脂、木、ビデオプロジェクション、音 139.7x411.5 x 76.2㎝ 
※本作品は「ブラックスターシリーズ」と本展の特別コラボレーション企画として展示しています。
《 波 》 2016年 ガラス繊維、樹脂、木、ビデオプロジェクション、音 139.7x411.5 x 76.2㎝  ※本作品は「ブラックスターシリーズ」と本展の特別コラボレーション企画として展示しています。

まず足を踏み入れたのは、闇に満たされた空間。そこにあるのは「ブラックスターシリーズ」と題された漆黒の彫刻群と、映像などを組み合わせたインスタレーションだ。夜の海に出航した船は、またたく星座を目指すものの、漕いでも漕いでも進むことはない。そして、人と神獣を融合させたような〝黒い星〟の像には、フィリピン土着の神も投影されているという。人類の行く末を暗示する、ダークファンタジーの世界が広がる。

ヴェンチューラの表現は見る者の想像力を喚起し、多様な解釈を許す。現代アートは難解と思われがちだが、おなじみのアニメや漫画、ゲームのキャラクターを参照して作品に取り込んだりと、日常の生活から発想した彼の作品は、同時代を生きる私たちにとっても共感しやすいだろう。

圧倒的な画力

《ドールアイズ2》 2020年 油彩・キャンバス 121.9×182.8㎝
《ドールアイズ2》 2020年 油彩・キャンバス 121.9×182.8㎝

スマートフォンの中のヴァーチャルな世界で、あふれるイメージを受容する日々。「ドールアイズ2」などの絵画作品は、リアルと仮想空間を当たり前のように往来しつつ他者と関わっていく私たちの日常を、アイロニーを込めて描いたものだ。

一見、モノクローム写真の上に、二次元の少女やスマホ画面のイメージを貼り付けたように見えるが、近づいて凝視してもらいたい。手描きの油彩画なのだ。

どこか見覚えのある奇妙なキャラクターから動物、半人半獣までポップな彫刻も楽しいが、やはり圧倒されるのはヴェンチューラの画力。まるでシュールレアリスム絵画のように、湧き上がるイメージを変幻自在に融合させた大画面の作品は見ごたえがある。

「早くから画才に恵まれ、大学で本格的な美術教育を受けた彼の創作の基礎には、西洋美術の伝統がある」と同館学芸員の石川なみ乃さんは指摘する。

進化の過程を見せるため

中でも油彩画「オーバーディフェンス」は興味深い。遠目にぼんやり浮かんで見えたのは、19世紀フランスの画家、ドラクロワの名作「民衆を導く自由の女神」やアンリ・ルソーの「戦争」のイメージ。が、実際に描かれているのは野球の乱闘シーン。飛び掛かるサルやトラ、権力に抗う人々の姿も紛れ込んでいる。

長くスペイン、アメリカなどの支配下にあったフィリピンは、自国の伝統文化を持ちながらも、外からの影響を強く受けてきた。野球とは米国文化のメタファーであり、カオスの世界はフィリピン社会や文化の複雑さを反映しているのだろう。

自らの起源―アイデンティティーを深く掘り下げ、「内省」するヴェンチューラ。「決して回顧展ではなく、彼の進化の過程を見せるための展覧会」(石川さん)。彼が好んで生み出すキメラのように、創作上でどんな変貌、進化を遂げるのかが楽しみだ。

第4展示室
第4展示室


ロナルド・ヴェンチューラ
ロナルド・ヴェンチューラ

■ロナルド・ヴェンチューラ(1973~) フィリピン・マニラ生まれ。アジア最古の大学でフィリピン・マニラにある聖トマス大学を卒業後、2011年にはサザビーズ(香港)で絵画《Grayground》が東南アジアのアーティストとして最高額で取引される。以後、アメリカ、ヨーロッパ、アジア各国のギャラリーや美術館で紹介され、現代美術の最先端として高い評価を受けている。彼の創作する絵画と彫刻は、その比喩的なモチーフの連鎖とともに世界の現代美術シーンで異彩を放っており、イメージとスタイルの複雑なレイヤー(層)を特徴とし、ハイパーリアリズムから漫画、落書きまでモチーフは多岐にわたる。

【展覧会オリジナルトートバッグプレゼント】

展覧会のために作られたRonald VenturaオリジナルトートバッグはA4サイズのファイルが十分に入り、マチが約11㎝ある大きめサイズ。綿100パーセントの丈夫なキャンバス生地なので、エコバッグとして使っても便利。人気の作品がブラック・レッド・ブルーでそれぞれスタイリッシュにプリントされた全3種類(2,750円、税込)。こちらを各3名、計9名様にプレゼントいたします。応募締め切りは10月3日(日)。当選者の発送は賞品の発送をもって代えさせていただきます。

◇応募ページ(産経iD) https://id.sankei.jp/e/2494

※応募には産経iDへの会員登録が必要となります。絵柄は選べません。

※軽井沢ニューアートミュージアムのオンラインストア(http://knam.shop8.makeshop.jp/view/category/ct213)でご購入いただけます。


【展覧会概要】

「ロナルド・ヴェンチューラ展-内省」 Ronald Ventura-An Introspective

<会場> 軽井沢ニューアートミュージアム 第1~第6展示室(2階) 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1151-5

<会期> 2022年4月10日まで

<開館時間> 10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで

<休館日> 毎週月曜日(祝日の場合は翌日)

<料金> 一般:2000円、高大生:1000円、小中生:500円

※未就学児無料 障がい者無料(付き添いの方1名は半額) ※その他詳細はHPをご確認ください

<アクセス> 徒歩:JR軽井沢駅北口から8分 / 自動車:碓氷・軽井沢ICから20分

<問い合わせ先> 軽井沢ニューアートミュージアム 学芸課 TEL:0267-46-8691 FAX:0267-46-8692

主催:産経新聞社、軽井沢ニューアートミュージアム / 協賛:株式会社NEW ART HOLDINGS 、 株式会社ホワイトストーン / 後援:駐日フィリピン共和国大使館ほか

<軽井沢ニューアートミュージアム ウェブサイト> https://knam.jp/