北朝鮮、奇襲兵器開発へシフト 指揮官すげ替え

北朝鮮建国73年の記念日を迎え、「民間・安全武力閲兵式」に臨む金正恩朝鮮労働党総書記(中央)=9日未明、平壌の金日成広場(朝鮮中央通信=共同)
北朝鮮建国73年の記念日を迎え、「民間・安全武力閲兵式」に臨む金正恩朝鮮労働党総書記(中央)=9日未明、平壌の金日成広場(朝鮮中央通信=共同)

【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は16日、列車から弾道ミサイルを発射する場面を公開し、奇襲攻撃能力の向上を誇示した。北朝鮮のミサイル開発では、米本土を狙った大陸間弾道ミサイル(ICBM)の派手な〝発射ショー〟に目を奪われがちだったが、米韓との戦力差を埋め、同時多発攻撃を可能にする多様な奇襲兵器に軸足は移っている。

北朝鮮の「鉄道機動ミサイル連隊」が15日に中部の山岳地帯から発射したとするのは、形状から3月25日に試射した短距離弾道ミサイルの改良型と同種とみられている。だが、大きく違ったのは、試射を指揮したのが核・ミサイル開発を一貫して主導してきた李炳哲(リ・ビョンチョル)氏ではなく、朴正天(パク・チョンチョン)朝鮮労働党書記だったことだ。

李氏はICBM開発の立役者としてスピード昇進を果たしたが、6月に新型コロナウイルス対応で問責され、更迭された。代わって軍内序列1位に浮上した朴氏は砲兵司令官出身で、軍の重心がより実戦向きに移ったことを印象づけた。

北朝鮮は16日、敵への「同時多発的な集中打撃能力」を高める目的で鉄道機動ミサイル連隊を組織したと明らかにした。北朝鮮は2017年にICBMを試射した上で「国家核戦力の完成」を宣言した。だが、日米韓に向けて仮にミサイルを放ったとしても、日米韓のミサイル防衛網に迎撃され、何倍もの報復攻撃を受ける可能性が高い。

そこで米朝首脳再会談が物別れに終わった19年以降、北朝鮮が注力してきたのが、15日に試射したような変則軌道で迎撃をかわす弾道ミサイルの開発だ。13日に試射を発表した新型長距離巡航ミサイルも、弾道ミサイルと同時発射して日米韓のレーダー網などを破壊することに主眼があるとみられている。「水面下」から奇襲攻撃できる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発も急いできた。

列車型発射台は、ロシアが旧ソ連時代に運用したことがある。鉄道網を使った長距離移動が可能な上、貨車や客車を装った奇襲発射も想定される。ただ、北朝鮮の鉄道網は老朽化が著しく、機動性や実用性に欠けるとの見方も強い。

一連のミサイル試射に絡み、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長は15日の談話で、兵器開発の5カ年計画に沿った「正常で自衛的な活動だ」と主張した。米国との緊張激化は避けつつ、ミサイル発射を今後も続行する方針を示唆した形だ。