ビブリオエッセー

それは「気にしない」生活 「主婦業9割削減宣言」唐仁原けいこ(中央公論新社)

いま、主婦系の雑誌やSNSをにぎわしているのは、「丁寧な暮らし」。アートのようなお弁当やピカピカに磨きあげられたキッチンシンク! 私もミニマリストを自認しているので部屋は散らかっていないし、キッチンもきれいな方だ、と思っていた。が、SNSなどで完璧な実例を見せられると、少々うなだれてしまう。

そんなとき見つけたのがこの本、センセーショナルなタイトルにひかれて手に取った。読み進めると至極当たり前のことが書かれていた。「主婦業を減らすのに、まず『気にしない』というのがとても有効である」「時代が変わってるのに、何でまだこんなことやってるの?」…。夫と子供を戦力に、最新家電で気楽に効率アップなど、もっともな提案の数々。

著者は3児の母で「複数のキャリアを同時進行するパラレルワーカー」。コロナ禍で全国一斉休校になったのをきっかけに育児や仕事、家事で過剰な日常を見直すため「主婦業9割削減を目指すブログ」を開設した。

そろそろ主婦業を卒業する年代の私も、来し方を振り返ると、「丁寧な暮らし」圧力や「周りを気にする」ことが主婦や働く女性をいかに追いつめるかと痛感する。この本にも「女ならこうあるべき/妻ならこうあるべき/母ならこうあるべき」。こんな「べき」に振り回されていた、とある。女性を家に閉じ込めようとする陰謀かとさえ思ってしまう。

もし丁寧な暮らしやアートなお弁当を作れない自分を情けなく思うお母さんがいたらこの本をお薦めしたい。

「私がしなきゃ」と自分を追い込まず楽しく暮らそう。それが家族にとっての幸せ。シンクが少々曇っていたって、いいじゃない。

奈良県桜井市 雜賀敦子(66)

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