自民総裁選で拉致問題埋没「具体的政策示して」

自由民主党本部=東京都千代田区永田町
自由民主党本部=東京都千代田区永田町

北朝鮮が日本人拉致を認めて謝罪した平成14年の日朝首脳会談から17日で19年となる。多くの被害者が帰国を果たせず、高齢化した被害者家族にとって時間の猶予はわずかだが、同日告示される自民党総裁選に向けた議論は盛り上がりを欠く。北朝鮮が新型ミサイルの発射実験を行うなど対外強硬姿勢を見せる中、局面を打開する具体的な議論が待たれる。

14年の日朝首脳会談に官房副長官として立ち会った安倍晋三前首相は、拉致解決を「政権の最重要、最優先課題」と位置づけ、令和元年5月に金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記と無条件で会談する意向を表明した。菅義偉(すが・よしひで)首相も方針を継承したが、日朝交渉は膠着している。

総裁選をめぐっては、16日に出馬表明したばかりの野田聖子幹事長代行を除く岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎ワクチン担当相の3氏が自らの政策を発表した。しかし、新型コロナウイルスへの対応や経済対策などが中心で拉致への言及はわずかだ。

岸田氏は13日の記者会見で、全ての拉致被害者の「即時一括帰国」を目指す考えを打ち出した。高市氏は9日のインターネット番組で「自衛隊が(被害者を)奪還することが可能な法律は日本に存在しない」と法改正の必要性に触れた。河野氏は16日の報道各社のインタビューで「早期解決には(金総書記との)トップ会談しかない」と語った。

ただ、野田氏を含む4人の候補について、党内には「党の拉致対策会議などで存在感がなく、本気度を測りかねる」との声もある。拉致被害者の救出に取り組む関係者らは「外交経験の豊富な候補もいる中で、具体策に乏しい」と焦燥感をにじませる。

岸田、高市、河野の3氏はいずれも被害者救出を願う「ブルーリボンバッジ」を着用している。ただ、長く問題に取り組む党ベテランらは「バッジは免罪符ではなく、具体的行動が重要だ」とクギを刺す。

日朝関係筋は「交渉は手詰まり状態だが、北朝鮮が新政権を継続性のある強固な政権と判断すれば、交渉に乗り出す可能性はある」と分析する。支援組織「救う会」の西岡力会長は「被害者と家族は高齢化し、拉致問題は重大局面だ。総選挙も間近に控え、さまざまな政策を具体的に示して議論し、被害者帰国につなげていただきたい」と語る。(中村昌史)