勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(312)

崖っぷち 主砲・ブーマー、力みまくり…

三振に激怒し、バットを放り投げる阪急・ブーマー
三振に激怒し、バットを放り投げる阪急・ブーマー

■勇者の物語(311)

長嶋のまさかのホームランでシリーズの流れをつかみ損ねた阪急は、苦戦を強いられた。第2戦こそ九回に5点を奪って逆転勝利したものの、西宮球場に戻っての第3、4戦を落とし、広島に〝王手〟をかけられてしまう。

②広島●2―5○阪急

③阪急●3―8○広島

④阪急●2―3○広島

最大の原因は主砲・ブーマーの不振。この59年シーズン、外国人選手として初の三冠王(打率・355、37本塁打、130打点)に輝いたブーマーが、徹底的な「内角攻め」で封じ込められた。

「ストレートがくると分かっていても打てないんだ。原因は何かって? そんなことが分かっていたら、とっくに打ってるさ」

福本によれば原因はブーマーの「生真面目な性格」という。

「あいつは他の外国人選手と違って、真面目に考え込むんや。入団1年目は故障ばっかりでチームに迷惑をかけた。申し訳ない―と、2年目は見違えるばかりの体になって来日しよった」

ブーマーはオフに体質を改善した。大好きなケーキやアイスクリーム、コーラなどの炭酸飲料を断ち、レモンをかじったり生ジュースを飲んだり。自宅にウエートトレの器具を買い込んで鍛え直した。だが、シリーズではその真面目さが裏目に…。考え込んでノイローゼ気味になってしまったのである。

18日の第4戦、阪急は2―2の同点で迎えた八回、先頭の山田が執念で右前安打。福本も中前へと続き弓岡がバントで送る。簑田が敬遠の四球で歩かされ満塁でブーマーに打席が回った。

ブーマーは力みかえった。0―2からのホームランボールをファウルにすると、続くボールダマに手を出し、最後はワンバウンドになったフォークボールに空振りの三振だ。

「リズムも余裕もなかったな。かというて、ほかに代えるヤツもおらんし…」

上田監督もお手上げの表情。そしてネット裏のノムさんはこう見た。

「8割以上内角にくると分かってて打てんのは、気持ちやのうてもう技術の問題。オレなら6番に下げる。シリーズは戦前に集めたデータの確認や実戦の結果から、修正を加えていくことが要求される。打線の修正は急務や」(敬称略)

■勇者の物語(313)