性被害者の匿名化、法制審答申 侮辱罪厳罰化など法相諮問

上川陽子法相(春名中撮影)
上川陽子法相(春名中撮影)

法制審議会(会長・内田貴早稲田大特命教授)は16日、逮捕状や起訴状に記す性犯罪被害者らの氏名などを匿名化できる刑事訴訟法改正案の要綱を上川陽子法相に答申した。再被害などを防ぐため、被害者の情報が刑事手続き全体で加害者に伝わらないようにする。法務省は早ければ来年の通常国会にも改正案を提出する。また、上川氏は法制審総会で、刑法の侮辱罪の厳罰化や性犯罪規定見直しなど3件の検討を諮問した。

刑訴法改正案の要綱などによると、強制性交や強制わいせつなどの事件を対象に、逮捕状や起訴状、判決文などで被害者の氏名や住所などを秘匿できると規定。性犯罪以外に、被害者らの身体、財産に危害が及ぶ恐れがある場合も可能とし、ストーカーや暴力団が絡む事件も想定される。

具体的には、捜査機関が従来の逮捕状に加え、被害者の氏名や住所を伏せた抄本を裁判所に請求。逮捕時は容疑者に抄本を提示する。起訴時は検察官が起訴状の原本に加え、原本と同じ内容の謄本、匿名にした抄本を裁判所に提出。裁判所は弁護人に謄本、被告に抄本を送る。一方、匿名措置に不服があれば、被告や弁護人は裁判所に申し立てできるとしている。

侮辱罪の諮問は、拘留(30日未満)か科料(1万円未満)という現行の法定刑に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を追加する内容。インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策を強化するためで、法制審では表現の自由との関係などが議論される見通し。

性犯罪規定の見直しは、強制性交罪などで処罰の適用範囲を狭める要因と指摘される「暴行・脅迫」要件をどう改正するかなどが焦点。戸籍に氏名の読み仮名を登録する戸籍法などの改正も諮問された。

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