【ビブリオエッセー】不屈のアフガン女性への希望 「わたしが明日殺されたら」フォージア・クーフィ著 福田素子訳(徳間書店) - 産経ニュース

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不屈のアフガン女性への希望 「わたしが明日殺されたら」フォージア・クーフィ著 福田素子訳(徳間書店)

タリバンがカブールを制圧した衝撃のニュースから1カ月。このイスラム原理主義勢力による再度の暫定政権は報道で知る限り、抗議デモが相次ぐ中であの恐怖政治に逆戻りさせようとしている。アフガニスタンのことをもっとよく知りたいと思い、見つけたのが、2011年に刊行されたこの本だった。一人のアフガン女性の生き方に一縷(いちる)の希望を感じたいと思った。

1975年、フォージア・クーフィは生まれたその日から死に直面した。女の子という理由で将来を悲観した母親に太陽の下、放置されたのだ。しかし、後悔した母親により一命を取り留めたが、その後も死と隣り合わせの生活は続く。侵攻してきたソ連との戦争や続く内戦、政治家だった父親は話し合いのために出向いて殺される。やがて母親も失い、最愛の夫は拉致拷問された。

神学生たちが組織したタリバンだ。原理主義のもと女性にブルカを強制し、働くことや教育の機会を奪い、暴力沙汰が相次いだ。虐げられる女性たち。しかし、彼女は母親の英断でアフガン女性では稀な高等教育を受けていた。

2001年の米中枢同時テロの後、一時は壊滅に追い込まれたタリバン。彼女はユニセフでの勤務を経て、アフガニスタンの下院議員選挙で当選し、女性初となる下院副議長に就任する。大統領候補とも目され、女性の地位向上に心血を注いできた。

今回のタリバン復権で、一部の報道では彼女がカタールに一時逃れたようだ。一日も早く母国への帰還をと願っているだろう。私には想像すらできない国情。この20年を生かせず、再び暗黒の歴史が繰り返されようとしていることが残念でならない。しかし、彼女のような希望が残っていることを信じ、私は本を閉じた。

大阪市旭区 中村仁哉(35)

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