【ソウル=桜井紀雄】韓国大統領府は15日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が視察する中、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験に成功したと発表した。文氏が唱えてきた「自主国防」強化路線の成果をアピールする計画だったが、実験直前に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したため、機先を制された格好だ。
発射実験は、中部にある国防科学研究所の実験場で行われた。SLBMは8月に就役した3千トン級潜水艦「島山安昌浩(トサンアンチャンホ)」に搭載して水中から発射、計画通りの距離を飛行して目標に命中したという。技術開発が完了し、実戦配備に移る。
韓国政府は、実戦配備が米露中英仏印に続く7カ国目になるとしているが、北朝鮮は韓国に先駆けてSLBM開発に着手しており、事実上のSLBM保有国とみなされている。
文政権は、安全保障を米国に依存する現状からの脱却を目指し、国防予算を年平均6・5%増やしてきた。最近発表した2022年の政府予算案では前年比4・5%増の55兆2277億ウォン(約5兆2千億円)で日本の21年度当初の防衛予算にほぼ肩を並べた。
北朝鮮も1月の軍事パレードで新型SLBM「北極星5」を登場させるなど、開発を加速させており、SLBMの試射や新造潜水艦の進水が警戒されている。