【浪速風】ビル・エヴァンスのバー - 産経ニュース

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浪速風

ビル・エヴァンスのバー

コロナ禍の影響でビル・エヴァンスを奏でるバーの再開はまだ遠い(写真はイメージ)
コロナ禍の影響でビル・エヴァンスを奏でるバーの再開はまだ遠い(写真はイメージ)

ある小さなバーのマスターが教えてくれた。「ビル・エヴァンスをかけると、ジャズを知らないお客さんもおしゃべりをやめて静かになるんですよ」。優美な演奏で知られるそのピアニストは、1980年のきょう亡くなったが、作品は色あせない。代表作の一つがクラブでの演奏を収めたアルバムだ。曲の切れ間にテーブルの食器やグラスの音も聞こえる

▼コロナ禍にあって酒場は飛沫(ひまつ)の漂う危険なスポットとして扱われ、ビル・エヴァンスをかける小さなバーも営業はかなわない。閉ざされたシャッターの前に立ち、休業を告げる張り紙を見ると、防疫の線引きの難しさと無情を感じる

▼緊急時、ある程度の犠牲は受忍してひとくくりに規制をかけるのが、ひとまずは正解だ。ただ、時間とともに犠牲は積みあがる。どこかで制限の線を引き直さなければ。出口はまだ見えないが、前進していることを実感できる何かがあれば、あと少し、もう少し、と踏ん張れる。