【話の肖像画】台北駐日経済文化代表処代表・謝長廷(75)(14)アジアのリーダー 日本は自信もち行動を - 産経ニュース

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台北駐日経済文化代表処代表・謝長廷(75)(14)アジアのリーダー 日本は自信もち行動を

会談後、共同記者会見する菅首相(左)とバイデン米大統領=4月16日、ワシントンのホワイトハウス(共同)
会談後、共同記者会見する菅首相(左)とバイデン米大統領=4月16日、ワシントンのホワイトハウス(共同)

《「日台交流基本法」の制定を求めた自民党有志による今年3月の決議では、強権的な中国を牽制(けんせい)する動きもあった》


3月24日の決議は(中国について)「軍事力を背景に現状変更を試みる一方的な行動をとっている」と指摘しました。一方、台湾は基本的な価値観を共有するパートナーだと位置づけていただいた。

また日米両政府の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の議論を踏まえ、4月16日には訪米した菅義偉(すが・よしひで)首相とバイデン大統領の首脳会談で「日米両国は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」との文言が共同声明に盛り込まれました。

日米首脳会談の共同声明に台湾が盛り込まれたのは52年ぶりのこと。両国が台湾と周辺の安全保障に関心を高めていることを心から歓迎し、感謝しています。台湾は地政学的に、東アジアの要衝に位置しています。


《日本の政財界は中国側に配慮する傾向が強かったが》


もちろん歴史的な経緯からいっても、中国との和平を維持することは重要です。ただ長年にわたり日本が善意を示し、配慮を続けてきた中国は結果として現在でもあまり姿勢を変えていませんね。中国側で制作されて放映、上映されるテレビドラマや映画の多くも決して日本に友好的とはいえません。

かつて李登輝元総統は私にこう話してくれました。「日本は自信を喪失して何が正しいのか分からなくなっている。中国に配慮することが、いわば習慣のようになっている」と。

台湾のみならずアジアの多くの国々もアジアのリーダーとして、日本と日本人に地域の安定と繁栄のための役割を期待しているのです。


《日本はなかなかリーダーシップを発揮できていない》


例えば欧州バルト三国のリトアニアは台湾との関係を深めています。外交関係はないものの、台湾の外交部(外務省に相当)は7月に大使館にあたる代表処をリトアニアに設置すると発表しました。バルト三国はかつて旧ソ連と対(たい)峙(じ)して民主化運動を進めた経験があり、新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港問題で(中国に)批判を強めています。

新型コロナウイルスをめぐっては台湾がリトアニアにマスクを寄贈する一方、リトアニアからはワクチンが届けられました。リトアニアも近く、台湾に代表機関を設置する計画があるそうです。チェコも台湾との関係を深めていますね。いずれも大国ではありませんが、中国の言いなりにはなりません。


《日本は国交正常化した1972年に調印した日中共同声明に縛られている面がある》


共同声明では「日本政府は中華人民共和国政府の立場(台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの主張)を十分理解し、尊重する」としています。「尊重する」との立場ながら、日本政府の姿勢は台湾が中国の一部だと「承認」したかのようにみえるときがあります。「尊重」と「承認」には天と地ほどの差がありますよ。

米国やカナダなども日本と同じく、中国による台湾に対する主張を承認はしていません。

49年前に日本が中国と国交を結び、台湾と断交したとき、当時の田中角栄政権が台湾にあてたメッセージには「日本は台湾との間で外交関係を失うだけで、ほかはなにも変わらないよう努力する」とありました。

国際情勢が大きく変化している今こそ、日本には大国として自信をもって行動していただきたいと願っています。(聞き手 河崎真澄)