【世界文化賞】修復のプロ育成 若手芸術家奨励制度はイタリアの中央修復研究所付属高等養成所 - 産経ニュース

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世界文化賞

修復のプロ育成 若手芸術家奨励制度はイタリアの中央修復研究所付属高等養成所

2021年世界文化賞 提供写真第24回若手芸術家奨励制度 対象団体 2021 GRANT FOR YOUNG ARTISTS中央修復研究所付属高等養成所(イタリア)The Advanced Training School of the Central Institute for Restoration (Italy)2) SAF903フランチェスカ・カパンナSAF(ローマ)所長と学生Photo: Paola Ghirotti
2021年世界文化賞 提供写真第24回若手芸術家奨励制度 対象団体 2021 GRANT FOR YOUNG ARTISTS中央修復研究所付属高等養成所(イタリア)The Advanced Training School of the Central Institute for Restoration (Italy)2) SAF903フランチェスカ・カパンナSAF(ローマ)所長と学生Photo: Paola Ghirotti

世界の優れた芸術家を顕彰する第32回高松宮殿下記念世界文化賞(主催・公益財団法人日本美術協会=総裁・常陸宮殿下)では、次世代を担う若手芸術家を育成する「若手芸術家奨励制度」の第24回対象団体に、文化・芸術遺産修復のプロを育成するイタリアの「中央修復研究所付属高等養成所」が選ばれた。

2021年世界文化賞 提供写真第24回若手芸術家奨励制度 対象団体 2021 GRANT FOR YOUNG ARTISTS中央修復研究所付属高等養成所(イタリア)The Advanced Training School of the Central Institute for Restoration (Italy)7) SAF836旧サンタ・マルタ・アル・コッレージョ・ロマーノ教会の教育施設で作業する学生 ローマ 2021年Photo: Paola Ghirotti
2021年世界文化賞 提供写真第24回若手芸術家奨励制度 対象団体 2021 GRANT FOR YOUNG ARTISTS中央修復研究所付属高等養成所(イタリア)The Advanced Training School of the Central Institute for Restoration (Italy)7) SAF836旧サンタ・マルタ・アル・コッレージョ・ロマーノ教会の教育施設で作業する学生 ローマ 2021年Photo: Paola Ghirotti

第二次世界大戦が勃発した直後の1939年、戦火にさらされたイタリアの文化・芸術遺産の保存と修復を目的に中央修復研究所(ICR)が設立された。41年から修復のプロを養成するコースが本格的にスタートし、現在の高等養成所(SAF)へと発展した。

ローマと南イタリア・マテーラ(2015年開校)の2校に計110人(外国人は15%)が在籍する。毎年、18歳以上の25人が入学。5年間の修士課程では、修復の対象物を構成する素材を理解するために、無機化学、有機化学、生物学、物理学なども勉強する。

アレッサンドラ・マリノICR所長は、修復士に必要な資質について、「作品がその時代や現在の歴史的・文化的背景にどのように適合しているかを理解しなければならないし、素材面でも優れた認識を持つ必要がある。正確な作業を可能にする手作業の能力と専門知識が求められる」と説明する。

フランチェスカ・カパンナSAF所長によると、学生たちはICRの研究室、国や教会、個人や財団の敷地内の工事現場などでの作業を通じて理論と実践を学ぶ。現場での実習がコース全体の60%を占めるという。他国での国際協力プロジェクトにも積極的に参加し、ヨルダンのウマイヤード宮殿の壁画修復や、最近ではギリシャの水没したローマ時代の別荘を修復・復元する水中作業も行った。

開校以来約900人が卒業し、イタリア内外の文化・芸術遺産の保存修復に携わってきたほか、ルーブル美術館など欧米の美術館でも修復士として活躍。30年ほど前には日本人2人も卒業し、現在はそれぞれ画家になっているという。

両校はイタリア文化省の管轄下にあり、年間運営費(約4550万円)のほとんどを同省が出資。また、マテーラ校は地元の州政府からも資金援助を受けている。学生たちも、イタリアの公立大学の学生と同等の学費を負担。今回の奨励金(500万円)は、「今後2年間の学生による共同研究プロジェクト30件の助成に使う」(カパンナSAF所長)という。