【がん電話相談】前立腺がん、ホルモン治療中に再発したら… - 産経ニュース

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前立腺がん、ホルモン治療中に再発したら…

Q 70代男性です。平成19年7月、会社の検診で血中PSA(前立腺特異抗原)値が4・05でした。翌年末に5・63に上昇し、前立腺の生体検査(生検)を受けましたが陰性で、その後はPSA値4~7で推移し、経過観察をしていました。29年6月、PSA値11・72に上昇し、再度、生検を受けたところ、前立腺がんと診断されました。グリーソンスコア(生検で採取したがん細胞の病理学的悪性度の分類)は4+5=9(数値が8~10は高悪性度)でした。30年3月に前立腺全摘除術を受けましたが術後PSA値の低下が不良で、骨シンチグラフィーによる再検査で鎖骨付近に2カ所、転移が見つかり、ホルモン治療としてリュープリンの注射とビカルタミドの内服を始めました。

A 術後のPSA値はどのくらいでしたか?

Q 術後1カ月のPSA値は8・14でした。ホルモン治療により30年の暮れには0・05に、そして令和元年以降は現在まで0が続いています。

A 治療が奏功し、現在もPSA値0というのは大変良い経過です。

Q 個人差があることは承知していますが、再発リスクのデータがあれば知りたいです。

A ホルモン治療の進歩は目覚ましいですが、根治療法ではないため骨転移が完治することは残念ながらほぼ期待できません。画像診断で再発を認める前にはPSA値の上昇が続きますが、値が2倍になる倍加時間が短いほど再発も早くなるため、PSA値の上昇速度で治療法の変更など対応を考えることになります。

Q 再発した場合、どのような治療の選択肢がありますか。

A ホルモン治療を行った後、0近くに下がったPSA値が1~2に上がってきたらまず、抗アンドロゲン(男性ホルモン)剤であるビカルタミドをやめます。その理由は、はじめは薬として作用しても、長期投与するうちにがん細胞がこの薬を肥やしに変えてしまうことがあるためです。内科的去勢薬リュープリンは続け、2カ月くらい経過を見ましょう。これによりPSA値が低下するいわゆる〝抗アンドロゲン剤除去症候群〟が見られなければ、次にビカルタミドと同じ第1世代の抗アンドロゲン剤オダインに期待します。

PSA値がさらに上昇を続けたら、男性ホルモン遮断療法が効かなくなった去勢抵抗性と見なされ新薬を使用しますが、ザイティガ、イクスタンジの順序で投与することが有効期間延長のために推奨されています。骨転移の進行が見られる場合は、抗がん剤のドセタキセルを使用し、効果がなければカバジタキセルへの変更が考慮されます。また、骨転移が2~3カ所と少なく、リンパ節や他の臓器転移がなければ骨転移巣への放射線治療の追加も選択肢の一つになります。

Q これらは一般的な治療法でしょうか。

A はい。さらなる選択肢として、最近承認されたリムパーザという薬があります。これは、がんの発生、進展に関わるDNAの損傷を修復する遺伝子(BRCA1/2)に変異がある場合に適応となります。もう一つ、DNAの配列に異常を来してがん化が進む現象であるマイクロサテライト不安定性(MSI)を前立腺全摘標本で検査します。高頻度の異常(MSI-High)がみられる場合、免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダによる免疫療法の適応があります。

回答は、がん研有明病院顧問(泌尿器科)の福井巌医師が担当しました。

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