【世界文化賞】人間の尊厳、モノクロ写真に 絵画部門 セバスチャン・サルガド氏 - 産経ニュース

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世界文化賞

人間の尊厳、モノクロ写真に 絵画部門 セバスチャン・サルガド氏

2021年世界文化賞 提供写真絵画部門 セバスチャン・サルガド Sebastião Salgado_SHN9077『アマゾニア展』にて フィルハーモニー・ド・パリ 2021年Photo: Shun Kambe
2021年世界文化賞 提供写真絵画部門 セバスチャン・サルガド Sebastião Salgado_SHN9077『アマゾニア展』にて フィルハーモニー・ド・パリ 2021年Photo: Shun Kambe

世界の優れた芸術家を顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・公益財団法人日本美術協会=総裁・常陸宮殿下)の第32回受賞者が14日発表され、絵画部門はフォトドキュメンタリー作品で知られる写真家、セバスチャン・サルガド氏(77)=ブラジル/フランス=に決まった。

2021年世界文化賞 提供写真絵画部門 セバスチャン・サルガド Sebastião Salgado9)  170915-01-12084 《アマゾニア》 ブラジル・アマゾナス州の先住民族スルワハ領地の若者 2017年© SebastiãoSalgado
2021年世界文化賞 提供写真絵画部門 セバスチャン・サルガド Sebastião Salgado9) 170915-01-12084 《アマゾニア》 ブラジル・アマゾナス州の先住民族スルワハ領地の若者 2017年© SebastiãoSalgado

徹底した取材によるフォトドキュメンタリーで国際的に高く評価されている写真家。

ブラジル南東部ミナスジェライス州の小村で育ち、サンパウロ大学で経済学を学んだ。1969年、軍事政権の圧政を逃れ、妻のレリアさんとともにフランスに移住。パリ大学大学院を経て、国際コーヒー機関のエコノミストとしてアフリカの農業発展計画などに携わるうちに写真に傾倒。73年、写真家に転じた。マグナム・フォトなどエージェンシー所属を経て94年、パリに「アマゾナス・イメージズ」を設立した。

訪れたのは100カ国以上。モノクロを基調に、太陽光のみで撮影する。じっくり腰を据えて風景や状況に溶け込み、被写体に肉薄する。アフリカの飢餓をとらえた《サヘル-苦境にある人間/道の終わり》(86/88年)、世界中の肉体労働の現場に迫った《人間の大地 労働》(93年)、移民・難民の実態を追った《移民たち》(2000年)などを発表。「写真はわたしの言語」と語り、富の不均衡や戦争・災害の惨状を、苦境においてもなお失われることのない人間の尊厳を、写真を通して世に知らしめてきた。しかし1990年代半ば以降、ルワンダ虐殺やユーゴスラビア紛争で凄惨(せいさん)な暴力を目の当たりにして体調を崩し、一時活動休止を余儀なくされた。

ブラジルに戻り、荒廃した家族所有の土地に再植林を始めた。約20年間で原生種の苗木250万本を植え、水源や生態系も少しずつ復活。「大地研究所(インスティトゥート・テラ)」を創設し環境教育にも尽力する。《ジェネシス(起源)》(2013年)では世界中の手つかずの自然や動物、原始的生活を営む人々を取材。その様子や足跡を追った映画『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』は日本でも公開され、話題を呼んだ。

最新作は7年にわたりアマゾンの生態系と先住民族の生活を追った《アマゾニア》。違法伐採や金採掘、ダム建設、気候変動などがもたらす危機に警鐘を鳴らす。このほど写真集が刊行され、展覧会もパリを皮切りに世界各地に巡回中だ。