【朝晴れエッセー】指切りげんまん・9月7日 - 産経ニュース

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朝晴れエッセー

指切りげんまん・9月7日

東京オリンピック・パラリンピックが幕を下ろした。閉会式で映し出された手話通訳を見て、教わった表現が出てくるとうれしくなった。

今、私は手話奉仕員養成講座に通っている。週に1回2時間、全部で18回。指も頭の中もこんがらがるが、学べるというぜいたくな時間に感謝。きっかけは、市の広報誌でふと目にした受講者募集の文字。

けれど、手話ができるようになりたい、と思ったことはかつてにもあった。

1回目は十数年前、調剤薬局の薬剤師として、ろう者である若いお母さんにお子さんの薬をお渡ししたときだ。身振り手振りで薬の説明をしてみたがうまく伝わらず、付き添いの手話通訳者のお世話になった。

そのときのお母さんが、今の手話講師。運命の再会だ。

2回目は朝の通勤で、ろう学校の学生たちとたまたま同じ時間の電車に乗り合わせたとき。

コロナ禍による時差登校なのだろう。教科書が入ったリュックを背負い、空いた両手を使って会話をする彼らのそのまぶしい笑顔は、私の1日の始まりを元気にした。

手話は手、体、表情で、感情も時間も空間も全て表す視覚言語だ。その表現は美しくて、奥深くて、時に私を感動させる。

手話が誰しもの日常生活の一部となり、「ろう者」と「聴者」をこれからもつないでいてほしい。今はまだ手話初心者の私だけど、まずはわが身のスキルアップから始めよう。

両手の小指同士をからませて、指切りげんまん。それは、手話で「約束」を意味する。自分との約束をした。

山本香澄(58) 奈良県大和郡山市