【主張】NY劇場街の再開 希望のモデルを日本でも - 産経ニュース

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NY劇場街の再開 希望のモデルを日本でも

希望の幕がようやく上がる。

新型コロナウイルスの感染拡大で昨年3月から休演してきた米ニューヨーク市の劇場街「ブロードウェー」の興行が全面再開する。

18カ月に及ぶ閉鎖はブロードウェー史上、前例のない長さだった。その「復活」は、米国のみならずコロナの影響で停滞を余儀なくされてきた各国の文化・演劇業界に活力を与える効果を持つ。

「ニューヨークの鼓動」ともいわれるブロードウェーは、マンハッタンのタイムズスクエアを中心としたエリアを指し、40余りの劇場が集中する。厳しいオーディションを経て選ばれた役者らが人生の悲喜劇を最高水準の歌や踊りでつづる。英ロンドンのウエストエンドと並ぶ「世界のひのき舞台」である。

経済の牽引(けんいん)役でもある。ブロードウェーの業界団体によると、コロナ前の2018~19年のシーズンでは1470万人を動員、うち約2割を外国人観光客が占めた。およそ9万7千人の雇用を支え、年間の経済効果は150億ドルとされる。

何よりの特徴は、どんな環境であれ劇場に灯(あか)りがともされてきたことだ。2度の世界大戦の最中も興行を続け、01年の米中枢同時テロの際は「日常を取り戻す」と2日後に再開し、「テロに屈しないニューヨークの象徴」になった。それだけに今回の長期休演は、テロとは様相を異にするウイルスの脅威をまざまざと示した。

再開を後押ししたのはワクチン接種の進展だ。ニューヨーク州では必要回数の接種をした人が6割を超えた。とはいえ、感染防止対策として観客、出演者、スタッフ全員にワクチン接種済みの証明の提示が求められ、観客はマスクの着用を義務付けられる。

日本でも客席数の制限など手探りで再開が進んでいるが、ぴあ総研の試算では、昨年1~12月のライブ・エンターテインメント市場の規模は一昨年と比べ8割以上も縮小した。緊急事態宣言下の愛知県で行われた今年8月の音楽フェスティバルでは酒類が提供され、クラスターが発生した。

空間と時間を共有し、生の感動を分け合えるのがライブや舞台芸術の醍醐味(だいごみ)だが、大声を出さないなど感染防止策との共存はしばらく求められる。ブロードウェーの再開をモデルの一つとしたい。