【ビブリオエッセー】未練が結んだ人の絆 「時給三〇〇円の死神」藤まる(双葉文庫) - 産経ニュース

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未練が結んだ人の絆 「時給三〇〇円の死神」藤まる(双葉文庫)

職業「死神」。時給300円、勤務時間4時間、交通費なし、残業代なし、福利厚生なし。業務内容は「未練を残したままこの世に残り続ける《死者》をあの世に送ってあげる」こと。

ある日、高校生の俺、佐倉真司は美人のクラスメート、花森雪希からこんなアルバイトを紹介された。それにしても待遇が悪すぎるし、仕事内容が怪しすぎる。だが雪希が言うには、勤め上げればどんな願いでもひとつだけ叶えてもらえるそうだ。ますますうさん臭い。

嘘ではないのか。半信半疑ながら、借金まみれで卒業すら危うい佐倉に選択の余地はなく、あっさり引き受けた。即採用の前払い。さっそく出た初任給に「安いな。思わず払いそうになるわ」と苦しいジョーク。

依頼主は《死者》である。といっても幽霊ではなく、実体があるのだ。だが成仏すれば彼らの存在は消える。関わった時間とともに。この世に留まる「ロスタイム」をいかに使うか。死神の役目は死者の未練を晴らすことにある。

最初の依頼主はなんと近所の幼馴染、朝月静香だった。予想外の展開に面食らう佐倉だが、静香の願いは、病弱で誰とも口をきかない妹に「いつもありがとう」と感謝を伝えたいということ。そもそも静香は…。混乱する頭を抱えて佐倉のバイトは始まった。

二人目は黒崎というおじさんだった。妻と離婚した以前、幼い息子が書いた自分への手紙を探してほしい。不思議な依頼だった。

生きていれば多くの可能性があっただろう。未練を果たせて終わりでいいと本心から思えるだろうか。死神は非情な仕事にも見える。

契約の半年間を終えた時、佐倉が選んだ願いとは。意外な結末にきっと驚くはずだ。

札幌市南区 菅谷勇樹(33)

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