【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(309)】主力の戦線離脱 逆境にこそ勝機 不思議なパワー - 産経ニュース

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勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(309)

主力の戦線離脱 逆境にこそ勝機 不思議なパワー

山田の受難を報じる7月8日のサンケイスポーツ
山田の受難を報じる7月8日のサンケイスポーツ

昭和59年シーズンの阪急は不思議な傾向があった。チームの危機を迎えると、必ず選手たちが結束。逆に連勝で勢いがつくのである。

これ以上、バンプのわがままを許してはチームの秩序が崩壊する―と思われたときも、上田監督の「指揮権放棄」騒動で選手たちが結束。そのあと13連勝して勢いに乗った。そして、次の危機は七夕の夜に起こった。

◇7月7日 後楽園球場

阪 急 010 000 000=1

日ハム 000 005 01×=6

(勝)木田3勝5敗 〔敗〕山沖5勝5敗7S

(本)ブーマー⑲(木田)ブラント⑧(山沖)クルーズ⑰(山沖)田村⑤(山沖)柏原⑭(谷)

阪急の1点リードで迎えた四回のことだ。マウンドにはエース山田。1死一塁で柏原の放った打球がワンバウンドで右ひざに当たった。マウンドで四つん這いになって痛みに耐えるエース。なんとかその回を投げ切り、五回のマウンドに上がったものの、こらえ切れずに自ら降板した。

山田は9日、大阪市福島区の阪大病院で精密検査を受けた。結果は最悪だった。右ひざの「亀裂骨折」で全治3週間。戦列復帰は早くても8月初めという。オールスター出場も断念することになった。

「誰かが倒れれば、誰かカバーする人が出る。それを期待するだけや」。上田監督は言葉を絞り出した。

6月は三番・簑田が左手甲痛で欠場し、7月はエース山田の戦列離脱。この時点で2位近鉄に4ゲーム差をつけているとはいえ最大のピンチだ。

ところが10日の近鉄13回戦(日生)を佐藤が完投で11勝目を挙げると―

10日 近鉄 ○5―4 佐藤

11日 近鉄 ○9―2 今井

15日 日ハ ○16―2 佐藤

17日 西武 ○3―2 今井

18日 西武 ○7―3 宮本

19日 西武 △1―1 ――

27日 西武 ○4―3 今井

なんと、1分けを挟んで6連勝。これが勇者の強さだった。

山田は8月9日の南海戦(大阪)で戦列に復帰した。そして言った。

「ことしの胴上げ投手は、雄ちゃんに譲るよ」(敬称略)