菅義偉(すが・よしひで)政権最大の実績は、2050年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN50)」を掲げたことだろう。これまで日本は、世界の環境団体が地球温暖化対策に消極的な国に贈る「化石賞」の〝常連〟だった。首相が脱炭素社会の実現にこだわったのは、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰など環境対策を重視するバイデン米大統領の方針を踏まえ、日米連携を強化する狙いがあった。
首相は気候変動問題で後ろ向きな印象を一変させ、米国とともに世界をリードする好機を作った。就任直後の昨年10月の所信表明演説で、CN50に関し「積極的に温暖化対策を行うことが、大きな成長につながるという発想の転換が必要だ」と述べた。
通常、首相演説は関係省庁が事前に把握しているが、CN50について首相はごく一部にしか相談せず発表した。首相は演説直後、周囲に「今の経済構造ではいずれ日本はじり貧になる。日本人はいったん目標ができればそれに向かって全力で努力する。必ず目標は達成できる」と語った。