遥かなる尖閣、撮影や視察に政府消極姿勢 国有化9年、基金活用ゼロ - 産経ニュース

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遥かなる尖閣、撮影や視察に政府消極姿勢 国有化9年、基金活用ゼロ

沖縄県尖閣諸島
沖縄県尖閣諸島

国会議員らでつくる安全保障議員協議会(会長・久間章生元防衛相)が、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をドローンで空撮した映像をインターネットで配信する計画を進めているのに対し、政府が領有権を主張する中国との摩擦を懸念して神経をとがらせている。同協議会は東京都が募った寄付金約14億円の活用も提案したが、拠出先を国に限る条例の壁に阻まれた。国有化から11日で9年。日本固有の領土である事実を積極的に示そうとする試みに対し、政府は消極姿勢を崩していない。

好ましくない接近

「政府方針として尖閣への上陸は禁止しています。だからといって接近していいと言っているわけではありません」

尖閣諸島への接近について政府の考え方を問うと、内閣官房の職員はこう答えた。接近は好ましくないということだ。

計画では尖閣諸島をドローンで撮影する際、石崎徹衆院議員(比例北陸信越)ら国会議員6人が同行し、視察する予定だ。国会議員による尖閣諸島の海上視察は、平成24年の国有化前に当時野党だった自民党の山谷えり子氏(後に拉致問題担当相)らが行って以来とみられる。

政府は過去に尖閣への上陸行動が中国側からの激しい抗議を招いたため、国有化以前から上陸を禁止。これまで上陸許可を出したことはない。地元石垣市が行政標柱設置のため上陸申請の意向を示した際にも、加藤勝信官房長官は8月24日の記者会見で「原則認めない」との見解を示した。

ドローンは未知数

計画の狙いは尖閣防衛への世論喚起を図ることにあるが、国の許可が必要な上陸は予定していない。周辺海域の撮影はあくまで「漁業の実態調査、島周辺の環境調査」として行うことにしている。

一方、航空機による接近はタブーのようだ。会長の久間氏が足を悪くしているため、ヘリコプターでの上空視察が可能か民間航空会社に相談したところ、中国側が尖閣上空を防空識別圏に指定しているため、中国空軍がスクランブル(緊急発進)をかける恐れがあるとして断られた。

では、前例のないドローン撮影はどうか。ドローン規制法では高さ150メートル以内であれば許可不要とされる。ただし、中国側の対応は未知数だ。海上保安庁は巡視艇を周辺海域に常駐させているほか、海上自衛隊なども不測の事態に備え、情報収集を行っている。

基金活用実績ゼロ

同協議会は活動資金確保のため、24年に石原慎太郎東京都知事(当時)が尖閣諸島購入のため呼びかけた寄付金約14億円を元手にした尖閣基金の活用を都に提案した。だが、都の条例で国の活動に限って拠出することと定められているため、活用は不可能な見通しだ。

都は国に対し、漁業用の船だまりや無線中継基地の整備、自然環境の保全活動などを提案してきた。しかし、国から具体的回答はなく、基金の活用実績はゼロだ。韓国政府は8月、実効支配する竹島(島根県隠岐の島町)のリアルタイム映像を配信すると発表しており、日韓両政府の姿勢は対照的だ。

撮影計画について加藤官房長官は6月22日の会見で「この地域の安定的な維持管理という目的に照らし、政府において適切に対処する」と発言。同協議会の石崎氏は「許可の有無に関わらずゲリラ的に行うしかないのは大変情けないが、これが尖閣の現状でもある」と話す。

尖閣諸島をめぐる日中関係は緊迫化している。上陸禁止の強化につながっただけだとすれば、国有化の意義が疑われかねない。

(市岡豊大)