AKBの6人がリレーする手付かずのヒロイン - 産経ニュース

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AKBの6人がリレーする手付かずのヒロイン

ミュージカル「ジョン マイ ラブ-ジョン万次郎と鉄の7年-」の一場面
ミュージカル「ジョン マイ ラブ-ジョン万次郎と鉄の7年-」の一場面

アイドルグループ「AKB48」のメンバーがヒロインを務めるミュージカル「ジョン マイ ラブ-ジョン万次郎と鉄の7年-」が愛媛県東温市の「坊っちゃん劇場」で始まった。江戸末期、米国から帰国したジョン万次郎の妻「鉄」と、新しい文化を切り開いてゆく若者たちの幕末青春劇。同劇場で来年8月まで約1年間の公演を予定している。

愛媛県東温市にある「坊っちゃん劇場」
愛媛県東温市にある「坊っちゃん劇場」
波瀾(はらん)万丈の人生

ジョン万次郎は文政10(1827)年、土佐(高知県土佐清水市)の貧しい漁師の家に生まれた。天保12(1841)年に乗り組んでいた漁船が足摺岬沖で遭難し、漂流生活の末、伊豆諸島の鳥島で米国の捕鯨船に救助されて渡米した。

米国では捕鯨船の船長の保護の下、教育を受け、捕鯨船の船員などとして働き、金鉱で稼いだ資金を元にして、約10年後の嘉永4(1851)年、命がけの帰国を果たした。

万次郎は「黒船」の来航で米国の知識が必要だった江戸幕府に旗本身分で取り立てられ、英語の通訳や教授を務めたのをはじめ、万延元(1860)年には、咸臨丸で勝海舟らとともに再渡米するなど明治期にかけて活躍。明治31(1898)年に波瀾万丈の人生を終えた。

横山結衣さんが務めるヒロイン「鉄」(中央)=「坊っちゃん劇場」提供
横山結衣さんが務めるヒロイン「鉄」(中央)=「坊っちゃん劇場」提供
人気者だから呼んだのではない

「ジョン マイ ラブ」は万次郎が江戸の剣術道場の娘「鉄(てつ)」と結婚した安政元(1854)年から始まり、ともに過ごした激動の7年間を描いている。

作・演出の横内謙介さんは「鉄はこれまで脚光を浴びたことがなく、手つかずだった。その鉄をヒロインにできたのが作品の最大の強みです」と話す。

鉄役に起用したのはアイドルグループAKB48「チーム8」のメンバー。チーム8は47都道府県の代表としてオーディションで選ばれて結成、活動している。

これまでに決まっているのは、高岡薫さん(愛媛)▽高橋彩音さん(埼玉)▽高橋彩香さん(長野)▽服部有菜さん(岐阜)▽濵咲友菜さん(滋賀)▽横山結衣さん(青森)-の6人。鉄役を1カ月半程度ごとにリレーして舞台を続ける。

横内さんはAKB48を起用した理由について、「4年前に東京でチーム8の舞台を作ったことがある。初舞台の人が何人もいたが、個性豊かで、才能にあふれた人たちだと知った。また何かできたらいいなと思っていた」と語る。

ミュージカル「ジョン マイ ラブ-ジョン万次郎と鉄の7年-」の一場面
ミュージカル「ジョン マイ ラブ-ジョン万次郎と鉄の7年-」の一場面

鉄は万次郎と結婚したときの年齢が16歳だったことから、どうしても若いキャストが必要と考え、AKBグループを誕生させた音楽プロデューサー、秋元康さんに相談。秋元さんは面白がって「チーム8は地方出身アイドル。志は同じ」と快諾した。チーム8メンバーから希望者を募り、オーディションを行った。

「難しい歴史ものにはしたくなかった。同世代の女の子たちが共感して巻き込まれていく、そんな等身大のヒロインを描いている」と横内さん。「決して人気者ということで呼んだわけではありません」と強調していた。

その場でファンを作る

12月12日までの出演は高橋彩香さん、濵咲友菜さん、横山結衣さんの3人が務める。9月2日の初演前に取材に応じた高橋さんは「温かいキャスト、スタッフ、ファンに包んでいただき、愛される鉄を演じたい」と抱負を語った。濵さんは「皆さんと一緒に作品を作り上げたい」と話した。初日の舞台を務めた横山さんは「来てくださる方に元気を与えられる舞台にしたいです」と緊張した表情で話していた。

地元・愛媛代表の高岡さんは12月以降の登場となる。高岡さんは「坊っちゃん劇場は何度か観劇したことがある。まさか、自分もその舞台に立てるなんて考えてもいなかった。夢や希望といった人生のメッセージを込めて演じたい」と意気込みを語った。

舞台のフィナーレはハート型の「漂流ライト」で客席と一体に
舞台のフィナーレはハート型の「漂流ライト」で客席と一体に

万次郎役の天野翔太さんは「今回はヒロインがかわってゆく。本当に個性豊かで、毎回違う舞台のような不思議を感じている」と話した。

横内さんは「大傑作ができた。キャストは可能性に満ちている。1年間でどんな成長をするか楽しみだ」と手応えをつかむことができた様子。「その場でファンを作っていくのがAKB48のすごさ。ここから飛躍してほしい」と将来への可能性に期待を込めていた。

坊っちゃん劇場は平成18年に開業。年間を通じてオリジナルミュージカルを上演している。「ジョン マイ ラブ」は16作目となる。(村上栄一)