【聞きたい。】豊田巧さん 『駅に泊まろう!コテージひらふの短い夏』 広い北海道 東京目線で表現 - 産経ニュース

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豊田巧さん 『駅に泊まろう!コテージひらふの短い夏』 広い北海道 東京目線で表現

豊田巧さん(本人提供)
豊田巧さん(本人提供)

駅舎が宿になっているJR函館本線比羅夫(ひらふ)駅(北海道俱知安(くっちゃん)町)を小説の舞台にした。リストラされたときの体験から着想を得た。初めて時間に余裕ができ、北海道を巡った旅の最後の宿で、その独特の雰囲気に癒やされた。

「宿泊者がみんな仲良くなって、夜は飲みながら星を見たり鉄道話をしたりして。何もない環境だから、そうなるんだろうなと」

「駅に泊まろう!」シリーズのヒロイン美月(みつき)は「ブラック居酒屋チェーン」を辞め、東京を出て比羅夫駅のコテージのオーナーとなる。名物は、駅のホームで食べるバーベキュー。美月と宿泊者らの心温まる人間模様が軸だ。

分類上は「キャラ文芸」(登場人物や舞台設定に特徴のある小説)だが、長距離を移動する北海道生活の現実を描いて新たな読者をつかんだ。「全国をかなり旅しましたが、北海道はほかにない景色が魅力」と美月の道内移動の描写に力を入れる。

『駅に泊まろう!コテージひらふの短い夏』
『駅に泊まろう!コテージひらふの短い夏』

俱知安町・ひらふ地区は、国際的なスノーリゾート「ニセコ」として知られる。しかし、無人駅の比羅夫から向かう乗客はほぼいない。美月は初めて比羅夫駅に到着する直前、「交通機関がございませんので、比羅夫では降りずに…」という列車内のアナウンスに驚く。

道内なら余裕で日帰りできると誤解していた美月の東京目線で、北の大地の広さを表現。3巻目となる今作は、片道4時間かかる札幌と函館で遠距離恋愛中のカップルが登場する。

小説を書き始めたきっかけはリストラ。勤め先が吸収合併された。ミリタリーや宇宙好きだが、鉄道を題材にした児童書やライトノベルが当たり「〝鉄道の人〟になってしまった」。

令和12年度の新幹線札幌延伸に伴い、並行在来線の比羅夫駅は存続が議論になっている。「シリーズを続けられたら、二度と列車が来なくなる比羅夫を書いてみたい」(光文社文庫・682円)

寺田理恵

【プロフィル】豊田巧

とよだ・たくみ 昭和42年、大阪府生まれ。鉄道小説家。ゲームメーカーで電車運転ゲームの宣伝プロデューサーを務め、大ヒットさせる。平成21年に退社し、23年に児童書『電車で行こう!』で小説家デビュー。著書多数。