イケアの家具の組み立てをロボットに手伝わせる その研究は「人間と協働するマシン」を生み出す可能性を秘めている(1/3ページ) - 産経ニュース

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イケアの家具の組み立てをロボットに手伝わせる その研究は「人間と協働するマシン」を生み出す可能性を秘めている

イケアの家具の組み立てという大変な作業をロボットに手伝わせる研究に、米国の研究チームが取り組んでいる。その狙いとは、家具の組み立てという複雑な作業を自力でこなすマシンの開発ではない。ロボットが人間の行動を予測しながら動作し、うまく共同作業できるよう訓練することにある。

TEXT BY MATT SIMON

TRANSLATION BY YASUKO ENDO

WIRED(US)

イケアで買った家具の組み立て作業は、試行錯誤しながらの挫折と苦悩に満ちている。まるで屈辱に耐える訓練のように思えるほどだ。しかし、ご存じだろうか。この合板との悪夢のような格闘が、“賢いロボット”の誕生につながる可能性がある。

ロボット研究者たちは最近、このカオスのような日常世界のタスクを処理する方法をロボットに学習させるとき、イケアの家具を組み立てる作業が非常に好都合であることに目をつけた。例えば、ある研究グループが開発したシミュレーターでは、仮想のロボットアームが試行錯誤しながらイケアの椅子を組み立てている。

また、複数のロボットアームを使って実際にイケアの椅子を組み立てることに成功した研究チームもある。かかった時間は20分だったという。そしてこのほど登場したロボットは、生身の人間がイケアの本棚を組み立てているときに、次に必要なパーツを予測して手渡してくれる。

「イケアの家具は最も手ごろな実験台のひとつなのです。それに研究室でイケアの本棚をふたつか3つ壊したところで、それほど痛い出費ではありません」と、南カリフォルニア大学(USC)のロボット研究者ステファノス・ニコライディスは語る。ニコライディスは、21年5月に開催された米国電気電子学会(IEEE)の「ロボット工学とオートメーションに関する国際会議(ICRA)」で発表された今回の研究に関する論文の共著者でもある。「かなり安上がりですし、誰だって一生に何度かはイケアの家具を組み立てなくてはならないことがありますから」

ロボットが人間の傾向を把握

ニコライディスをはじめとする研究チームは、まず複数の被験者がイケアの本棚を組み立てる様子を観察した。イケアの家具には組み立て方を図解した説明書がついてくる。しかし、実験ではそれを使わず、被験者にはその場で作業の手順を考えて、本棚全体を支える外枠と棚板を組み立ててもらった(説明書を使わないところがポイントだ。というのも、この研究が掲げる大きな目標は、家具を組み立てられるロボットを開発することではないからだが、これについては後述する)。

続いて研究グループは、被験者をタイプや傾向に基づいて分類した。例えば、最初に棚板すべてを1枚の外枠に取り付ける人もいれば、1枚の棚板を両側の外枠に同時に取り付ける人もいた。こうした動作の順序はアクションシーケンスと呼ばれている。

実験では次に、被験者にもう一度、本棚を組み立ててもらった。ただし2回目は、本棚のパーツを手渡してくれるロボットアームが横にいる状況である。そして研究グループは、被験者が最初に手にしたパーツ(棚板か外枠か)を記録し、ロボットが作業順序を予測できるようパターンを設定した。