【正論10月号】続・令和の安全保障考 鼎談「勝てる軍事力を持て」㊦ 前内閣総理大臣 安倍晋三×元陸上幕僚長 岩田清文×元内閣官房副長官補 兼原信克(聞き手 田北真樹子) - 産経ニュース

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正論10月号

続・令和の安全保障考 鼎談「勝てる軍事力を持て」㊦ 前内閣総理大臣 安倍晋三×元陸上幕僚長 岩田清文×元内閣官房副長官補 兼原信克(聞き手 田北真樹子)

中国共産党創建100年を記念する祝賀大会で、大型スクリーンに映し出された「中国共産党万歳」と叫んで拳を突き上げる習近平国家主席=7月1日、北京の天安門広場(共同)
中国共産党創建100年を記念する祝賀大会で、大型スクリーンに映し出された「中国共産党万歳」と叫んで拳を突き上げる習近平国家主席=7月1日、北京の天安門広場(共同)

※この記事は、月刊「正論10月号」から転載しました。ご購入はこちらをクリック

岩田 七月一日の中国共産党創立百周年の場で、習近平総書記は台湾統一を「歴史的任務」と言いました。大変驚きました。完全に自分の任務だと思って前のめりになっているので、その習氏に対し「やめておけよ、来たら逆に危ないぞ、大けがするよ」と言い続けないといけません。

兼原 習氏は〝特別〟な感じがします。どういう意味か。安倍総理と一緒にお会いした李克強首相の印象は中国の官僚です。頭脳明晰で、日本だったら東大を出て大蔵省主計局長を経て総理になったような人。身振り手振りを交えて立て板に水でよくしゃべる。習氏は違っていて、毛沢東みたいな人です。若い時に父・習仲勲の失脚に伴って陝西省に下放されています。

高等教育が破壊され、幼いまま紅衛兵として動員され、教条的な毛沢東礼賛を吹き込まれた文化大革命世代です。父親が復権すると呼び返されて清華大学に入りますが、そのまま軍隊に入りました。その後、壮絶な中国共産党の内ゲバを勝ち抜いてきた。日本社会のことも、自由社会のことも何も知らないし、毛沢東は偉かったと本当に思っている。銃口から権力が生まれると思っている人です。

温家宝前首相にも福田康夫元総理と一緒にお会いしたことがあります。典雅で物腰が柔らかくて、古典に通じて教養に溢れ、さらさらと書や詩を書いて、大所高所から議論する。貴人です。習近平氏は違う。権力闘争の猛者、叩き上げの武闘派です。恐らく物の分かった中国人は泣いていますよ。あの人は危険です。やると決めたら止まらないと思います。

岩田 歴代指導者で思想という言葉を使ったのは毛沢東と習近平でしょ。「毛沢東思想」と「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」だけ。鄧小平でも「理論」ですよ。習氏は共産党創立百周年で毛沢東と同じ色の人民服を着ていました。第二の毛沢東、あるいは毛沢東を超えようとしていますよ。香港をすでに取っているから、台湾を取ったら毛沢東よりもさらに上に位置付けられることになる。それを歴史的任務だとしているんじゃないかと私は心配しています。

兼原 習近平の中国はこれまでの中国とは違うと見ないと危ないと思います。

――安倍前総理は習氏と何度も会談してきましたが、変化を感じましたか。

安倍 習近平国家主席自身は権力を徐々に集中していくわけです。集中していく中においてだんだん自信も深めていくんですね。最初の頃の中国の指導者は大抵、定型文を読むか、暗記して発言するかなのですが、権力の掌握度が高まるにつれて自由に発言するようになります。自信の表れと思いますね。確かに李克強首相とは全然タイプが違う。第一次政権の時の相手は胡錦濤国家主席だったけど、胡主席も中国の典型的・伝統的な指導者のタイプと思います。

中国に関することで一つ指摘しておきたいのは、中国に対して我々がこのように肌で感じている感覚を米国がどれぐらい持っているか、ということです。基本的に米国防総省とかはそういう認識をもっていると思うんですが、バイデン政権ができたとき、当初はみんな心配したと思うんですよね。

岩田 はい、当初は大変心配しました。中国に融和政策を取り続けた、オバマ民主党政権による悪夢の八年がありましたから。

安倍 でも、ブリンケン国務長官、サリバン大統領補佐官、オースティン国防長官らが対中ではしっかりしていた。バイデン大統領も伝統的なチームプレーの大統領の執務姿勢なんですね。チームで構築したものを自分が咀嚼して指導力を発揮していて、先般の先

進七カ国(G7)首脳会議においても菅義偉総理とともに台湾条項を明記し、中国に対してしっかり向き合うべきだということでリーダーシップを発揮したと聞いています。

兼原 バイデン政権の外交はブリンケン長官が仕切っていますが、まずは同盟国や友邦を固めてからという伝統的なアメリカ外交のスタイルです。

安倍 四月の日米首脳会談で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を共同声明に盛り込みました。同時に、日本の防衛力強化に関する決意も表明しました。今後、日本はある程度、能力を構築する必要があります。第一次安倍政権も含めてそれまでの十年間は防衛費は削減されてきたのですが、第二次政権発足後は防衛費を増強し始めました。防衛費のみならず海上保安庁も含めてです。ただ、中国の現状を考えればスピードを上げる必要があります。(㊤は9月号に掲載)

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月刊「正論」10月号の表紙
月刊「正論」10月号の表紙

「正論」10月号 主な内容

【特集 続・令和の安全保障考】

勝てる軍事力を持て㊦ 前内閣総理大臣 安倍晋三/元陸上幕僚長 岩田清文/元内閣官房副長官補 兼原信克

台湾海峡危機・政策シミュレーション 日本はいかに抑止し対処すべきか まとめ 本誌編集部

中国の台湾侵攻 その意志を断て 政治学者・元在沖縄米海兵隊政務外交部次長 ロバート・D・エルドリッヂ

【特集 横暴国家・中国】

「在日ウイグル人証言録②」 肉親を〝人質〟にした情報工作 評論家 三浦小太郎

<証言1>サウト・モハメド「SNSによる懐柔と篭絡工作」/<証言2>ムラット・エルキン(仮名)「息子でも何でもないと言って構わない」/<証言3>由理知沙見(ユリチサミ) 帰化後も続く嫌がらせ

地方の廃校を狙う中国エリート学校 産経新聞論説副委員長 佐々木類

「台湾代表処」の衝撃 チャイナ監視台 産経新聞台北支局長 矢板明夫

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国民に夢を語るリーダーの不在 スポーツジャーナリスト 二宮清純×登山家 野口健

そんなに悪くないぞ 無観客開催 札幌国際大学人文学部教授(係争中)、民俗学者 大月隆寛

酷かったマスコミ報道の煽りと変節 経済評論家 上念司

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