【記者発】日本文化を代表する「漫画」 文化部・本間英士 - 産経ニュース

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記者発

日本文化を代表する「漫画」 文化部・本間英士

7月、東京五輪開会式の入場行進で掲げられた各国のプラカードを見て、驚いた人も多かっただろう。漫画の吹き出しをモチーフにしたデザインだったからだ。映像を見た当の漫画家たちからは、「集中線の描き方が甘い」などとツッコミを入れられていたのはご愛嬌(あいきょう)。日本文化を代表するアートとして広く支持されている、現在の漫画の立ち位置を象徴する光景であった。

漫画市場は過去最大規模の成長を遂げている。出版科学研究所の調査によると、昨年のコミック市場規模は前年比23・0%増の6126億円。雑誌全盛期だったピーク時の平成7年を超え、25年ぶりに記録を更新した。電子版の普及で以前よりはるかに漫画を気軽に読めるようになり、インターネット上でも魅力的な作品が次々と生まれている。

漫画の影響力はこれだけではない。日本映画史上最高の興行収入を記録した「鬼滅の刃(やいば)」の例を出すまでもなく、世界で人気のアニメも、邦画やテレビドラマも、多くの作品は漫画を原作としている。名作漫画の筋書きやセリフは教養や格言、共通言語のように人々の間に根ざし、会話の端々に登場する。もはやサブカルチャー(一部の人々が担う独特な文化)という言葉は適切ではないように思える。

人気漫画のヒットの背景には、現実社会の世相が色濃く反映される。4月に完結した「進撃の巨人」には、人を食う「巨人」の存在を通じて社会の分断が描かれ、世界中の若者はそこに自分たちの姿を見て取った。出版文化に詳しい澤村修治・淑徳大教授は、同作を「漫画という枠にとどまらず、後年の人々が2010年代という時代を論評するうえで欠かせない作品」と評した。記者も同意見である。

もちろん、手塚治虫をはじめとした先駆者たちが描いた漫画も、平成6年に653万部という金字塔を築いた週刊少年ジャンプ全盛期の漫画も素晴らしい。ただ、現在の漫画業界にも特筆すべき才能や後世に残るであろう作品が続々と現れていることも知ってほしい―というのが、漫画担当としての率直な気持ちだ。

漫画はファンの多い分野である。記事の書き手が善かれと思い、変な持ち上げ方をした原稿は結果的に逆効果となることも多い。フラットな記事を淡々と書いていきたい。

【プロフィル】本間英士

平成20年入社。前橋支局、大津支局、整理部などを経て文化部。現在はメディア、漫画担当。31年から漫画書評「漫画漫遊」を執筆している。