【編集者のおすすめ】「重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて」 弾圧の残虐さ世界に伝える - 産経ニュース

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「重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて」 弾圧の残虐さ世界に伝える

『重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて』
『重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて』

中国北西端の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で行われている民族弾圧。本書に書き記された実態は戦慄すべきものでした。

著者のサウトバイさんは、この地に生まれ育ったカザフ人女性。医師であり教師であり、2人の子をもつ母親です。この地にはウイグル人をはじめカザフ人、キルギス人などさまざまな民族が先祖代々暮らしてきましたが、大戦後、人民解放軍の軍事侵攻で中国に組み入れられました。

中国政府は先住の異民族に対するさまざまな弾圧を進めてきました。固有の言葉を禁じ、伝来の文化や宗教を破壊していきます。2016年にはチベット大弾圧を敢行した人物が派遣されて強権的な監視や尋問が始まり、各所に再教育施設と称する「収容所」が数多く設置されます。

著者はある日、収容所に連行され、収容者に対する中国語教育を命じられます。収容者たちは少女から老人まで、衰弱しきったその姿はまさに「生けるしかばね」でした。 本書につづられたのは自ら経験し、自らの目で見た事実。だからこそ、この絶望的な現実が圧倒的な力で迫ってきます。当局の隙をついて命がけで国境を越えた著者は、隣国カザフスタンに逃げ込み、その地の法廷でウイグルの実態を証言します。この証言は世界に衝撃をもって広がりました。

なおも続く脅迫に怯(ひる)むことなく「ここで行われている残虐な行為を外の世界に伝えるのだ」という勇気ある決意を、ひとりでも多くの方に受け止めていただきたいと思います。

(草思社編集部 藤田博)