【ロングセラーを読む】イスラム教の聖典、ユーモラスに 阿刀田高著「コーランを知っていますか」 - 産経ニュース

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イスラム教の聖典、ユーモラスに 阿刀田高著「コーランを知っていますか」

「信仰告白」や「喜捨」など、イスラム教徒の実践すべき行為も紹介。
「信仰告白」や「喜捨」など、イスラム教徒の実践すべき行為も紹介。

断食、モスク、ハラルフード…。思い浮かぶキーワードはあるけれど、日本に住んでいるとなかなかなじみがないイスラム教。

本書は、イスラム教の聖典「コーラン」がテーマ。直木賞作家の著者が、ギリシャ神話や聖書などの古典をダイジェストにして優しくかみくだいたシリーズの中の1冊だ。

コーランは、預言者マホメットが神から受けた啓示を記したもの。その内容は、遺産相続から女性の扱い方、離婚の方法まで具体的に規定している。

本書では、マホメットの人生をたどりつつ、コーランの内容を紹介。当時の文化や社会情勢にも触れられており、イメージがつかみやすい。「信仰告白」や「喜捨」「礼拝」など、イスラム教徒の実践すべき行為の解説はもとより、旧約聖書や新約聖書との比較もあり、理解の手助けになる。

イスラム教への敬意を示しつつも、コーランの記述を「親父の説教に似ているなあ」と表現したり、細かい規律に「へえー、こんなことまで」と驚いたり。ユーモラスな表現が、すっと頭に入ってくる。登場人物の個性が際立ち、まるで落語を聞いているかのように、情景が浮かびあがってくる。

平成15年に単行本が出版され、17年12月に刊行された文庫は現在14刷12万部。中近東を訪れるビジネスマンや観光客などに人気で、毎年のように増刷されてきたという。「聖書などと比べストーリー性が薄いコーランを、分かりやすく再構成しているのは小説家ならでは。気楽に手に取ることができ、読み終わるころには自然と知識が身につく点が評価されているのではないでしょうか」と新潮社の担当者。

著者はあとがきで、《二十一世紀の世界はイスラムとの協調を抜きにしては考えにくい。そのイスラムの根底にあるのがコーラン、と、これもまた論をまたない》と記している。

最近では、イスラム原理主義勢力タリバンがアフガニスタンの実権を握り、国際社会に大きな衝撃を与えた。一方で、身近なところでは、日本で働くイスラム教徒も増えている。

世界を理解し、手を取りあっていくために役立つ、優れた入門書だ。