アフガン教育支援20年の女性「見捨てないで」 タリバン復権、支援活動見通し立たず - 産経ニュース

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アフガン教育支援20年の女性「見捨てないで」 タリバン復権、支援活動見通し立たず

アフガニスタンの子供たちに文房具を配る中道貞子さん(右)=2011年(中道さん提供)
アフガニスタンの子供たちに文房具を配る中道貞子さん(右)=2011年(中道さん提供)

米中枢同時テロから20年となる11日、アフガニスタンの教育支援に約20年にわたって取り組んできた奈良女子大国際交流センターの客員センター員、中道貞子(ていこ)さん(74)が「アフガンを見捨てないでほしい」とオンライン講演で訴えた。イスラム原理主義勢力タリバンが実権を掌握後、現地から助けを求めるメッセージが届いた。日本で何ができるのか悩む日々。まずは「伝えよう」と踏み出した。(前原彩希)

「この20年間、アフガンの普通の人の暮らしをみてきた。今できることは何かを考えていきたい」

約300人が視聴したこの日のオンライン講演会。中道さんはアフガン支援に携わった女性2人とともに参加し、語りかけた。

テロを受けた米主導の軍事作戦で、教育の制限など女性の人権を抑圧した旧タリバン政権は崩壊した。翌2002(平成14)年、中道さんは奈良女子大など5大学によるアフガンの女性教員を養成するプロジェクトに参加し、これが支援を始めるきっかけとなった。当時、同女子大付属中等教育学校の副校長だった。

その年の夏、初めて首都カブールを訪問。学校の壁には銃弾の痕が生々しかった。顕微鏡で細胞を観察する理科の模擬授業を行うと、10代の生徒たちは目を輝かせた。「細胞って美しい」。初めて顕微鏡をのぞいだ女子生徒は弾んだ声で話した。学校に通えなかった生徒も多く、教室は学べる喜びであふれていた。

その後は個人としても毎年のように現地を訪問、授業指導など支援を続けた。

屋外やテントで授業を受ける子供たちのために「学校を建てたい」と思い、05(17)年には、私財約500万円を投じてバーミヤン州に小学校の校舎を建設した。子供たちのうれしそうな顔が忘れられない。

アフガンを訪ねたのは17(29)年が最後だ。現地の情勢悪化で訪問が難しくなった。今年8月、タリバンがカブールを制圧した。

「(タリバンが怖いので)昼は山に隠れ、夜に家へ帰る。ここにいたら殺される」

8月下旬、現地の知人から悲痛なメッセージが届いた。怒りと悲しさで胸がいっぱいになる。「『とにかく生き延びて』としか言えず、何もできない自分が悔しかった」

現地の教育関係者からも「タリバンはお金がないから教員の給料は支払えないと言っている。教員たちの将来に何が起こるのかわからない。国連の支援を求めている」と連絡がきた。

この20年、少しずつでも暮らし向きや教育の質も向上していると感じていただけに、悔しさが募る。

「これまでの歩みが止まってしまうのか」

無力感にさいなまれるなかで決めたのが、多くの人々に現状を伝える発信だ。 11日、「宝塚・アフガニスタン友好協会」の西垣敬子さん、「RAWA(アフガニスタン女性革命協会)と連帯する会」の桐生佳子事務局長とともにオンライン講演会を開催した。視聴者に向かって中道さんはアフガンに関心を持ち続けてほしいと訴え、こう強調した。

「それぞれの立場でできることをやるしかない。何もやらなければゼロだが、0・01であっても、それが積み重なれば形になる」

中道さんがアフガニスタンに建てた校舎=2009年 (中道さん提供)
中道さんがアフガニスタンに建てた校舎=2009年 (中道さん提供)
支援活動見通し立たず

アフガニスタンの実権を握ったタリバンは女性の人権尊重や民族融和をうたうが、国際社会は懐疑的だ。暫定政権にも女性は入っていない。アフガン支援に関わってきた日本の民間団体の間にも、圧政や混乱への懸念が広がる。

「これまでの支援が途絶えてしまうこともあり得る」。約20年前からアフガンで学校建設などの教育支援を行ってきた公益社団法人「シャンティ国際ボランティア会」(東京)の事務局長兼アフガニスタン事務所長の山本英里(えり)さんは危惧する。政権が変わったことでこれまで通りの活動が継続できるかは不透明で、今は情報収集を進めている。

山本さんは「できる限り支援を継続したいがまだ見通しは立たない。アフガンを孤立させず、国際社会が支援していくことが大切だ」と訴える。

「RAWAと連帯する会」の桐生佳子事務局長は「アフガンは近年治安が悪く、現地での活動はなかなか難しい。タリバンの政権運営を見極めないといけないが、とにかく今は危険だ」と指摘。「支援を継続していくため、金銭的援助などに取り組んでいきたい」と話した。