【本ナビ+1】クリエイティブディレクター 佐藤可士和 異色の脇役スターがゆく『こう見えて元タカラジェンヌです』 - 産経ニュース

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クリエイティブディレクター 佐藤可士和 異色の脇役スターがゆく『こう見えて元タカラジェンヌです』

『こう見えて元タカラジェンヌです』
『こう見えて元タカラジェンヌです』

『こう見えて元タカラジェンヌです』天真みちる著(左右社・1870円)

「見たくなくてもあなたの瞳にダイビング☆」。帯の強烈なキャッチコピーに、太眉&もみあげ&ねじりハチマキ、手には1本の赤いバラというインパクトのあるビジュアル。もとはといえば、宝塚歌劇ファンの妻が読んでいて家にあったのだが、文字通り僕の瞳にダイビングして、読まずにはいられなくなった。

残念ながら僕は著者、天真(てんま)みちるさんの現役時代の舞台を拝見していないのだが、宝塚は何度も観(み)たことがある。だから本書の前提となる世界観を何となくわかっているが、宝塚を知らない人が読んでも楽しく示唆に富んだ「ドラマチックコメディー」だと思う。

まず文章が面白い。宝塚を目指したきっかけから音楽学校時代、入団から退団までの13年間の日々を追うと、実に劇的なことの連続だ。たとえば音楽学校入寮の日、男役志望にしては髪が長すぎた天真さんがご自身で散髪してとんでもないことになった事件には、思わず噴き出してしまった。また初舞台のラインダンスの稽古では、「ここで同期を信じられなくてどうする!」と振り付けの先生の叱咤(しった)激励が飛ぶ。そして、同期と積み重ねた稽古の重みが、次第に著者の心の安定剤になっていくさまに胸が熱くなる。

天真さんは、「究極の理想の男性」を極める男役スターを擁する宝塚歌劇団にあって、モヒカンの用心棒や角刈りにねじりハチマキの車引きなど、「情報量の多いおじさん」役を極めた方だそうだ。「タカラヅカに新ジャンルを築いた」と言われる天真さんだが、入団してからずっと「演じてみたい役」と「最初に目指すべき方向性」の違いに戸惑う日々が続いたという。その葛藤を超えて、脇役のトップスターとなるべく前進する姿には、立場や業界を超えて共感し、学ぶべきことが多々あるように感じた。

クリエイティブディレクター、佐藤可士和さん
クリエイティブディレクター、佐藤可士和さん

『京大変人講座』酒井敏ほか著(三笠書房・1760円)

京都大学に受けつがれる「自由の学風」「変人のDNA」を広く世に知ってもらうため平成29年に発足した公開講座をまとめた一冊。京大には「対話=ダイアローグ」の伝統があるという。それは「討論=ディベート」とは異なる、お互い提案しながら、次第に形を変えて新しい場所に行き着く〝発見方式〟。アドリブの発想が求められるダイアローグは今、世の中にとても必要な気がする。

『京大変人講座』
『京大変人講座』

さとう・かしわ 昭和40年、東京生まれ。多摩美大卒。クリエイティブスタジオ「SAMURAI」を主宰し、企業のブランド戦略やデザインなどを手掛ける。