ソウルからヨボセヨ

オッパと呼ばれたい

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(右)と金与正党第1副部長(韓国共同写真記者団撮影)=2018年4月27日
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(右)と金与正党第1副部長(韓国共同写真記者団撮影)=2018年4月27日

韓国は家族主義が強い社会なので、他人でも親しくなると家族(血縁)のような呼称を使う。その一つに「オッパ(お兄さん)」がある。本来は妹が兄を呼ぶときの言葉だが、近年は若い世代を中心に他人であっても親しい男女や恋人、夫婦の間でこれをよく使う。

したがって周りで女性が男性に「オッパ」といっている場面に出くわしても、本当の兄妹か恋人同士かよくわからない。家庭内では既婚の男性にその妹と嫁が同じように「オッパ」というし、若夫婦では寝室でも夫は「オッパ」といわれる。

そこで韓国のドラマや映画には「オッパ」がしょっちゅう登場するのだが、北朝鮮で最近、ひそかにこの「オッパ」が流行し、当局は取り締まりのため、それを使えば懲役刑を科する厳罰令を出したとか。北でもヤミ市経由などで韓国の映画やドラマが影響を与え「カッコいい流行語」になっているというわけだ。

「オッパ」にはどこか甘えた感じがあって、いわれた男性はどこか心地よい。筆者など「一度いわれたいものだ」と思っているのだが現実はいつも「アッパ(お父さん)」か「ハラボジ(おじいさん)」の方だ。ところで北朝鮮のロイヤルファミリー、金正恩(キム・ジョンウン)・金与正(ヨジョン)兄妹の間は本当の家族だから当然、「オッパ」である。(黒田勝弘)

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