記憶と記録継承、捜査情報開示の動き 9・11テロ20年 - 産経ニュース

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記憶と記録継承、捜査情報開示の動き 9・11テロ20年

11日、米ニューヨーク市の中枢同時テロの追悼施設で、父親の名前が刻まれた場所近くにたたずむ女性と婚約者の男性(ロイター)
11日、米ニューヨーク市の中枢同時テロの追悼施設で、父親の名前が刻まれた場所近くにたたずむ女性と婚約者の男性(ロイター)

日本人24人を含む2977人が亡くなった2001年9月の米中枢同時テロから20年となった11日、現場のニューヨーク市では「あの日と同じ青空」(地元メディア)の下、追悼式典が行われた。遺族の間では、家族を亡くした事件の「全てを知りたい」と捜査情報の開示を求める声が根強く、米政府は機密指定の見直しに乗り出した。記憶の風化を防ぎ、若い世代に同時テロの「歴史」を伝える事業も始まっている。

追悼式典は、国際テロ組織アルカーイダにハイジャックされた旅客機が突入し崩壊した世界貿易センター(WTC)ビルの跡地「グラウンド・ゼロ」で開かれ、バイデン大統領夫妻のほか、クリントン、オバマ元大統領夫妻ら要人も出席した。

新型コロナウイルス感染防止のため昨年には中止された遺族2人1組で犠牲者の名前を読み上げる追悼が復活。ハイジャック機がビルに激突した時刻やビルが崩壊した時刻ごとに、参列者は黙禱(もくとう)をささげた。

乗っ取られた旅客機が墜落した東部ペンシルベニア州シャンクスビルでも追悼式典があり、テロ発生当時の大統領、ブッシュ(子)氏らが出席した。

グラウンド・ゼロにある追悼施設「9・11記念博物館」は遺族向けに開放され、式典前から厳かな雰囲気に包まれた。博物館はテロから20年を前に、事件の経過とその後の世界の変化の学びを支援するため、「ネバー・フォーゲット(決して忘れない)基金」を立ち上げた。

旅客機の操縦士だった父を亡くした女性が体験を語る動画などの教材も提供している。米国民のうち約7500万人は同時テロ後生まれで、人口の2割を占める。そうした「事件を知らない若い世代に歴史を伝える取り組み」(アリス・グリーンワルド館長)だ。

親子2代で消防士を務める市消防局のジェームズさん(23)は、父親や、テロ現場での救助活動中に亡くなった同僚の家族から当時の話を聞き、育った。「朝早く出勤し、食事をとり、同僚と話した次の瞬間に生死を分ける現場に出る。そうして亡くなった先輩の誇りを受け継ぎ、後輩に伝えたい」と話す。

記憶と記録の継承が進められる一方、それへの障害もある。「同時テロの発生を米政府は事前に知っていたのに見逃した」「米政府による自作自演」などの陰謀論だ。博物館周辺では今も口にする者がいる。

同館のクリフォード・チャーニン副館長は「陰謀論は特別な知識を持ちたいという人の願望に根ざしている」ともらす。その解決には社会ぐるみの取り組みが必要だとし、同館の役割は「何が起きたのかを率直に伝えることだ」と語った。

8日、オンラインで外国メディアの取材に応じる「9・11記念博物館」のチャーニン副館長(平田雄介撮影)
8日、オンラインで外国メディアの取材に応じる「9・11記念博物館」のチャーニン副館長(平田雄介撮影)

テロについて、多くの遺族は長年「真相を知りたい」と願ってきた。実行犯19人のうち15人が首謀者のウサマ・ビンラーディン(米海軍特殊部隊が11年に殺害)と同じサウジアラビア人だったことなどから生じた疑問「サウジ政府の関与の有無」の解明だ。

米連邦捜査局(FBI)は、実行犯がサウジ政府とつながりのある人物から支援を受けていたかを検証し、16年に報告書を公開した。だが、開示が部分的なことなどから、米国と戦略的な同盟関係にあり、テロへの関与を否定するサウジ政府に対する「外交的配慮で秘匿した情報があるのでは」との疑念の声もある。

バイデン大統領は昨年秋の大統領選挙で「情報開示に前向きに取り組む」と発言。今月3日には「法の下で最大限の透明性を確保する」と声明を出し、新たに開示できる関連文書がないか検証するよう司法省や関連機関に指示した。

同時テロで父を亡くしたブレット・イーグルソンさんは「歴代政権は機密指定見直しを先延ばし戦術に使ってきた」と言いつつも、「真相を知るための最初の一歩だ」と期待している。

(ニューヨーク 平田雄介)