震災遺構、失われる伝承機会…コロナ長期化、修学旅行中止も - 産経ニュース

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震災遺構、失われる伝承機会…コロナ長期化、修学旅行中止も

東日本大震災の発生から、11日で10年半。本格的な秋の修学旅行シーズンを前に、福島、宮城両県内にある震災遺構や伝承施設で団体予約のキャンセルが相次いでいる。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、福島県に蔓延(まんえん)防止等重点措置、宮城県に緊急事態宣言が出されている影響とみられるが、長引くコロナ禍は震災の教訓を若い世代に伝える機会を失わせている。

「東日本大震災・原子力災害伝承館」(福島県双葉町)は地震と津波、東京電力福島第1原発事故という複合災害の記録や教訓を伝える施設として、昨年9月にオープン。開館直後はコロナ禍でも10月に約1万2千人、11月には約2万人が訪れ、予想を上回った。

同館企画事業部の橘内隆(きつない・たかし)部長によると、「今年の秋も順調で数千人規模の予約が入っていた」という。しかし、感染拡大が長期化している影響で、現在は「半数近くになっている」(橘内部長)といい、学年単位で申し込んだ県外の高校のキャンセルが多いという。

最近は個人の来館も減少。橘内部長は「入館者が1日当たり100人に満たない日もある」と話す。

一方、宮城県気仙沼市の「東日本大震災遺構・伝承館」では、県内に重点措置が適用された8月20日以降、修学旅行を中心に55件(約3500人)の予約キャンセルや延期があった。8月の来館者数も約4500人と、コロナ禍前の一昨年に比べ約3分の1の水準にまで落ち込んだという。

宣言の対象地域に移行した翌日の8月28日から12日までは臨時休館とし、重点措置に移行する13日以降の対応は未定としている。同伝承館の広報担当者は「コロナ禍で防災などに目を向ける機会が失われるのは残念だ」と語る。

同県石巻市で6月にオープンした「みやぎ東日本大震災津波伝承館」でも、8月27日以降に4件(155人)の団体客の予約があったが、うち3件(147人)がキャンセルされた。内訳は1件が修学旅行で、2件が一般団体客という。

同伝承館の運営担当者は「年間でスケジュールを組んでいる学校も多い。修学旅行のキャンセルで津波などについて学ぶチャンスがなくなるのは残念」としている。

延期の修学旅行、中止も

修学旅行は学習指導要領に定められた教育活動の一環だ。文部科学省はコロナ禍でも近距離の実施や日程の短縮などを呼びかけ、学校側に実施を求めている。ただ、たび重なる延期などで日程調整が難航し、やむを得ず中止を決める学校も出ている。

緊急事態宣言の対象地域となっている相模原市では、市立中学3年の生徒らが5、6月に京都や奈良などへの修学旅行を計画していた。しかし、感染拡大の第4波に見舞われたため、8月以降に延期。その後も第5波で実施が難しくなり、再びの延期を余儀なくされた。

市教育委員会の担当者は「再延期では来年1月以降のタイミングとなるが、高校進学など進路を決める時期と重なるため、中止を決める学校もある」と話す。

コロナ禍では、春や秋に修学旅行の子供たちでにぎわう観光地も大打撃を受けている。昨年、沖縄県を訪れた学校は395校。前年(2398校)から83・5%減り、過去最大の減少幅を記録。こうした苦境は継続しており、京都市観光協会が市内の主要ホテル・旅館の利用状況を集計したところ、今年4~7月の修学旅行による宿泊は令和元年度比89・1%減となった。